シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第1回 エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ

日系ゼネコンが手掛けた名建築 in シンガポール

2018年7月9日

第1回 エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ

完成:2002年 / 設計:DP Architects Pte Ltd + Michael Wilford / 施工:五洋建設

街並みは一つ一つの建造物の集合体として形作られる。シンガポールの中心部においては、世界中で活躍をしている建築家たちの作品が街並みを構成している。そして、それらの作品の多くは日系建設会社が施工している。今月から12回にわたってシンガポールを彩る日系企業の携わった名建築を紹介していきたい。

 

 

マリーナ地区にその外観から通称「ドリアン」と呼ばれている建物がある。正式名称は「エスプラネード・シアターズ・バイ・ザ・ベイ」、総合芸術文化施設だ。ここは80年代終わり頃に社会の基盤を確立したシンガポール政府が、次の目標としてアジアの文化拠点となるべく始めた事業の一つで、設計者はコンペ方式で選ばれた。コンペの結果、シンガポールの設計事務所DPアーキテクツと英国の設計事務所マイケル・ウィルフォードのチームが勝ち取った。マイケル・ウィルフォードはコンペ時に全体のプラニングに寄与したが諸事情によりチームを抜けたため、この作品は実質的にDPアーキテクツ単独の設計ということができ、彼らの代表作と言える。

 

この建築は五洋建設が施工している。五洋建設は施工に必要とされる条件を全て満たしているとの判断から選ばれた。五洋建設は本体躯体(くたい)を仮設切梁(きりばり)の代わりに使うスーパーストラクチャーを提案して、採用された。また、演奏空間は外部の音を遮断する「ボックス・イン・ボックス」構造、超静寂空間や残響調整を採用したことにより世界最高レベルの音響空間となった。最大の特徴である、外部のトゲトゲはスペースフレームに支えられた7,000枚以上の形状の異なる固定されたアルミ板で構成されており、それらの角度は、景色を阻害することなく太陽の運行を計算して設けられている。このように全てのパーツが異なる形状のパネルは当時最先端の三次元ソフトで解析され、設計されており、パラメトリック・デザイン黎明期の先行的かつ革新的なデザインと言え、世界クラスの建築物と言える。

 

著者プロフィール

 

藤堂 高直(とうどう・たかなお)
1983年東京生まれ。15歳の時の渡英する。
2008年にロンドンの名門建築大学AAスクールを卒業。
同年に英国王立建築協会パート2資格を取得。卒業後はロンドン、ミュンヘン、パリ、東京と建築設計に携わる。
2012年に渡星、現在はDPアーキテクツに所属。
スペインのログロニョで行われた設計競技に優勝。
シンガポールでこれまでに手掛けてきたのは、ゲンティン・ホテルやオーチャード・ロードのインターナショナルビル改装など。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.335(2018年7月1日発行)」に掲載されたものです。

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