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座談会

2018年7月4日

厳しさ増すEP取得、日系企業への影響は!?

EPの更新も難化、注目されるSパス
貴重な20代人材、30代と逆転現象も出ている

AsiaX:さて、日本人や日本語スピーカーが必要な場合は依然あると思います。EPを取得しやすい業種などはありますか。また、EP取得だけでなく、更新も難しくなっていますが、日系企業はどのような状況なのでしょうか。

 

小坂田:金融業界や石油業界の外国人労働者の比率が多いところを見ると緩めかもしれません。一方、サービス業は非常に難しいように聞いています。要は専門的であり、海外から人を連れてこないと事業が進まないケースは認められやすいのではないかと思います。

 

松本:シンガポール政府が注力している業界は有利だと思います。金融はもともと強いですが、最近ではIoT、AI、ビックデータ、バイオなどです。

Sパスに関しては、企業の中にEPの更新が難しい場合、活用しようとする動きはありますね。また、ウォッチリストに載っていても、Sパス枠がある企業はSパスで人を採用しています。

 

副島:Sパス枠はローカル人材6人に1人ですが、業種によっては5人のところもあります。サービスと非サービスで分かれています。市場では3,000SGDでEPが取得できる20代の人材は貴重だとみられています。30代がSパスで、20代がEPみたいな構図になってきたりもしています。

 

南郷:私の印象は逆ですね。Sパスは枠が決まっていて貴重なので、EPを取得できそうな人はできるだけEP申請して、企業はSパスを温存しようとしていると感じています。

 

塩崎:Sパス枠を温存するという流れはありますね。これは当社が人材サービス業だからできることかもしれませんが、今年度よりスタッフィング(派遣)に力を入れています。企業さまに幅広いサービスを提供することが主目的ですが、スタッフィングの場合は雇用元が当社となり当社のローカル雇用数が増加することで、自社採用のためのSパスを確保できるという狙いもあります。

 

AsiaX:MOMが問題にしているのは基本的にはEPだけということですか。

 

副島:ただ、LOC (Letter of Consent)が認められなかった事例はあります。ウォッチリストに載っているもののLOCなら大丈夫だと考えていたようですが、結果的には難しかったです。

 

松本:LOCは以前でおりていました。今は2週間くらいかかります。具体的な発表があるわけではありませんが、簡単には出さないというMOMの思惑や意図は伝わってきます。

 

 

転換期の人材サービス会社
ローカル化と専門性を強化

AsiaX:EPが厳格化されていく状況の中で、今後、人材サービス会社もビジネスモデルを順応させていく必要があると思います。また、企業として期待していることはありますか。

 

副島:日本人のマーケットが引き締まってきており、日本人求職者向けサービスの成長は難しいと認識していますが、直近では企業の日本語スピーカー需要は増してきているので、そのニーズに対応できるよう各大学、語学学校との関係作りなどに動いています。
求職者に対しては、エージェントとして現状を正しくしっかり伝えていくことが重要だと思っています。採用内定しても、ぬか喜びせずビザがおりてから次のプロセスに進むということを丁寧に一つずつサポートしていくことが重要です。

 

松本:2017年1月にEPが一気に厳格化され、基準が上がった時に、当社は外国人についてはよりハイレイヤーの専門性を持った人材の紹介に力を入れていくこととし、コンサルタントも専門性を高めていくという方針を掲げて取り組んでいます。また、日系企業では日本人駐在員が減っていく中で、その担ってきた役割を果たせるマネジメント、シニアマネジメント層のローカル人材のニーズが出てきています。ローカル人材のハイレイヤーにも力を入れているところです。

 

南郷:最近は日本人がローカルスタッフに置き換えられることが増えていますので、弊社は以前以上にローカルの若手のソーシングに注力しています。
一方で、日系企業には日本人や日本語スピーカーがほしいというニーズは一定数あります。しかし、シンガポール人の日本語スピーカーは減っていますので、どうしても日本からあるいは別の国で働いている日本人ということになりますが、好景気の日本からなかなか出てくる人が少ないのも事実です。そこで、面接では企業から候補者に一方的に質問するのではなく、会社の魅力をアピールする場としても生かすためのアドバイスなどにも力を入れています。

 

塩崎:これまで通り日本人に対するニーズがある一方で、日本語スピーカーや日本語を話さない人のニーズも相対的に上がってきていますので、当社ではこの分野のサーチ力を上げるべく、新しくイベントと提携するなど取り組みを強化しています。
候補者、求職者に対しては、彼ら彼女らも独自に調べていますが、日本人はEPで働くものだという誤解や先入観が強過ぎる人や、給与水準を調べ過ぎて諦めにつながっている人も見受けられます。実際、外資系などにはEPの金額をさっと出す企業もあるわけです。ですから、何か職のことで困ったら、気軽に連絡してくださいというアプローチをとっていこうと思っています。
今後の市場開拓という点では、日系企業はもちろんですが、外資系企業の日本人需要に対しても、日系のエージェントとして力になっていきたいと思っています。

 

小坂田:EP厳格化を機にローカリゼーションを考える会社が増えています。日本人駐在員や現地採用の日本人に代替して、シンガポール人を採用するというときに、やはり日本語は話せたほうが良いという場合もあれば、話せなくても良いからコミュニケーション能力が高い人を採用したいということもあります。人材サービス各社には人材のプールを厚くしていってほしいと思っています。
今後は採用したシンガポール人を日本で研修し、企業文化を理解させた上で、シンガポールで勤務してもらうような流れも拡大していくと思います。そうした流れに合う人材も重要だと思います。

 

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