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座談会

2018年7月4日

厳しさ増すEP取得、日系企業への影響は!?

取得者が前年比4,500人減、採用活動に影響!?
ウォッチリストに載る企業も増えている

AsiaX:外国人に対する就労規制は、ここ5~6年継続して進められてきましたが、EP取得数は右肩上がりで推移してきました。しかし、今年3月に前年比4, 500人減少と発表されました。数字が表すように影響が出てきていると思いますが、企業からどのような相談が多いでしょうか。

 

南郷:厳格化されたと言われていますが、実際のところ何がどう厳格化されたかについての認識は企業ごとに異なっています。ただ、気を付けなければ本当にウォッチリストに載ってしまうし、その後ビザが取得しづらくなるということです。EPの代わりにSパスで採用したい。ローカル人材の採用に切り替えたいという相談、そしてローカルと日本人の比率に注意を払っているという話等が増えていますね。

 

松本:一昨年と比べると、EPを取得して日本人を含む外国人を採用したいという求人件数は半分くらいになったという印象があります。シンガポールの求人需要に大きな変化はありませんので、退職者がいれば補充するはずですが、EPで外国人を採用したいという事例は減ってきています。EPで採用できない場合にどうすれば良いかという相談が増えています。

 

副島:EPがおりるまでの期間が長くなっているということもあります。これまで約2週間で取得できていましたが、1ヵ月とか、中には3ヵ月というケースも出はじめていますので、対策をよく聞かれますね。

 

AsiaX:EP取得に関しては、年齢と出身大学、そして給料額との関係が言われています。日本だけでなく世界中の大学について決まっているのでしょうか。

 

南郷:世界の主要大学について年齢と給料額が決まっています。当社では、これまで申請したデータを地道に記録してリストを作成して、毎年更新しています。昨年時点の調査で分かっていることは、2016年がかなり厳しかったために、昨年は若年層が若干取得しやすくなったようです。

 

AsiaX:レビューの時間が長く、内定を出すタイミングも問題となっているようですが、どのように対応されていますか。

 

小坂田:現場では、EPやSパスが取得できることも採用の条件としています。従って、応募者には内々定という状態でEP/Sパスが取得できるまで少し待っていただいています。その結果、当社では内定していたにもかかわらず、EPやSパスが取得できず働くことができなかったというケースはありません。一方、内々定の段階では採用が確約できないため、現職との退職交渉についてはEPやSパスがおりてからで良いという方針です。就労ビザの取得が最終要件です。

 

塩崎:IPA(In-Principle Approval letter)がおりるまでの期間は誰にも分かりませんので、今後は内定または内々定を得ていても、ビザを待っている間に候補者の状況が変わってしまうなど今までにはなかった理由による辞退が増えていく可能性は十分あると思います。

 

松本:採用企業には過去の事例の蓄積があります。企業ごとにおよそ何週間というパターンが見えていますので、その日数をもとに入社して欲しい日から逆算して内々定を出すというケースが多いと思います。例えば、これまでEP申請後取得まで平均4週間だったので、そこに退職申出の期間を入れて計算していきます。今のところ4週間と予想していたのに3ヵ月になったという事例を見た経験はありません。
ただ、ウォッチリストに載っている企業やEP申請時の記載項目に指摘が入った企業で長期化したことはありました。3ヵ月どころかもっと長くなりましたが。

 

南郷:シンガポールに事務所を立ち上げて、一度に多くの駐在員を移すというケースでは、どんなに高額のサラリーでもレビューに時間がかかったことはありました。
また、追加資料を求められることも珍しくなくなりました。以前は何も聞かれなかった企業でも、MOM(人材開発省)に呼ばれヒアリングを受けたりしていますね。

 

AsiaX:一昨年末に導入されたセルフアセスメントツールについても触れたいと思います。学歴などをインプットすると給料いくらならビザが取得できると出てきます。ただ、それに従って申請しても審査に落ちるケースもあると聞きます。どんな理由が考えられますか。

 

副島:盲点ですが、申請中に誕生日を迎える場合はEPの取得金額のラインが引き上がるために落ちてしまいますね。それ以外の求職者サイドの理由はあまり聞ききません。

 

松本:どちらかと言えば、審査に落ちるのは企業側の理由でしょうね。セルフアセスメントツールには候補者側の情報しか入力しないので、入れていない企業側の情報が原因になっていると考えています。

 

AsiaX:では、話に出ましたウォッチリストについてもお伺いしたいと思いますが、ウォッチリストに載ると何らかの知らせが来るのでしょうか。抜けるにはどのような対応が求められるのでしょうか。

 

松本:ウォッチリストに載るとレターが突然届きます。抜けた時も突然レターが来るようです。

 

南郷:受け取る企業は増えている印象があります。商社系、製造業系にもまさかという感じでレターが届いています。それが伝わり他社も戦々恐々としています。

 

小坂田:当社は現在、外国人とシンガポール人(PR含む)は1:2です。これ以上外国人比率が増えると、ウォッチリストに載る恐れも出てくるので、原則この割合を維持する方向で考えています。

 

南郷:昔は、日系企業のシニア世代は英語が苦手だったので、言葉の問題で日本人や日本語スピーカーの需要が大きかったと思いますが、最近は語学ができる人も多いなかで、どうしても日本人というニーズは、まだ根強いのでしょうか。

 

小坂田:言葉より文化の問題だと思います。日本的なやり方、進め方に慣れている、日本文化の中での暗黙知が共有できている人の方がこのビジネスに関してはうまくいくという場合が少なからずあります。そういうケースには日本人の採用を優先することがあります。

 

副島:大手の製造業、商社を中心に1年ほど前からウォッチリストに載り始めましたが、抜けている実績も徐々に出てきていますね。

 

松本:ウォッチリストに載った場合、よく提出を求められるのは採用計画です。シンガポール人を採用するプランを示して、実際に採用すると外れるようです。もう一つは、「ナレッジトランスファー」と言われていますが、今いるマネージャークラスやスペシャリストの日本人、外国人のポジションを、次の世代でシンガポール人に置き換えられるようにトレーニングしているかなどを説明するようです。

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