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アジアおもしろクルマ事情(マレーシア編)

2018年6月29日

マレーシア自動車産業のもう一つの顔

国民2人に1台という割合で自動車が普及しているマレーシアでは中古車の市場も大変活況です。国産、輸入中古車の売買、中古車部品の売買だけでなく、最近は海外への中古車部品の再輸出も精力的に行われ、まさにモータリゼーションのもう一つの顔を見せています。

 

 

すでに国民2人に1人が自動車を保有しているマレーシアでは、クルマは一握りの富裕層の乗り物ではなく、庶民の足といえるでしょう。所得水準の低い層でも購入しやすいように他国にはない9年間などの長期の自動車ローンも普及しています。そして、ユーザーには新車を長く使う傾向があり、平均7年間に及んでいます。タイやインドネシアが平均4年あまりですから、際立っています。マレーシアの新車販売量が頭打ちになっているのは、グラブなどの配車アプリが市民権を得てクルマの保有ニーズが減少していることもあるのですが、新車保有期間の長期化も大きな要因といえそうです。

 

マレーシアは都市部でも意外と古い車が走っている

 

マレーシアは古い車が多く中古車ブローカーの活躍の場

首都クアラルンプールの高速道路にはピカピカの高級車が“我が物顔”で走っていますが、庶民の住む街角では意外と古い車が見受けられます。日本のように車検制度や廃車制度がないためクルマは所有者を変えながら実質壊れるまで使い続けられるのです。こうした背景もあって、少し頑張ればクルマを手に入れることができます。(写真左・中古車販売修理店)

 

中古車の市場は大変活況で、毎年、新車の販売量が年間60万台であるのに対し、その約80%にあたる50万台程度の中古車が取引されています。メインプレーヤーは中古車の販売業者で、店舗を持たないブローカーや個人間売買の仲介業者などを含めると、クアラルンプールだけでも5,000以上の中古車業者があるといわれています。以前のユーザーの乗り方、年式やモデルの人気度によってそれぞれ個々に価値=値段が決まる中古車は「一物一価」の相場ビジネスです。新車と違って中古車の売買ビジネスは非常にスリリングなのですが、消費者にとっては安価だが何を掴まされるかわからないリスキーな取引かもしれません。

 

 

 

 

日本からの中古車輸入が年間2万台

マレーシアでは、日本からも中古車がたくさん輸入されています。

 

東南アジアの国々では自動車の国産化という産業政策を守るため、新車の輸入に対しては様々な制限や関税・非関税障壁を設けているのですが、中古車輸入については事実上容認しています。

 

特にマレーシアは日本からの中古車輸入量が多く年間2万台にも及びます。同じく自動車の国産化を進めるタイやインドネシアでも中古車(日本の新古車)が流入していますが、その量は少なく、マレーシア政府の自国の自動車産業を守ろうという姿勢が少し希薄ではないかとも思います。

 

中古部品市場のマレーシア

クアラルンプールから高速道路を通って1時間ほどの港町カラン市周辺には、そうした日本から流入した中古車を販売する店が並んでおり、その一角には中古の部品販売会社も軒を連ねています。そして、通り沿いにはスクラップが野積みされており、目を疑うような光景が広がっています。入り口には、いきなりボンネットだけのクルマが……。さらに奥に入って行くと様々な中古エンジン、バンパー、ライト、ドアなど内外装の部品がそれなりに仕分けされ所狭しと並んでいます。ほとんどが日本から中古部品として輸出されたものです。

 

こうした輸入中古部品は、マレーシア国内で輸入中古車や国産中古車の修理用部品として使用されるほか、アフリカなど日本の中古車マーケットにも再輸出されているようで、内需・再輸出含めマレーシアは中古部品の集積地となっているのです。(写真左・中古部品販売業者)

 

自動車産業についての政策は必ずしも成功しているとは言えないマレーシアですが、モータリゼーションの進展によって、自動車流通業という面では様々なビジネスを生んでいると言えるのではないでしょうか。

プロフィール

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藤井 真治(ふじい しんじ)

(株)APスターコンサルティング
アジア企業戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー

自動車メーカーの広報部門、海外部門、新規事業部門経験30年以上。インドネシア/香港現地法人トップとして海外での企業マネジメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業を支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応えます。『現地現物現実』を重視し、クライアントと一緒に汗をかくことがポリシー。
Website: www.ap-star.jp  E-mail: fujii258@gmail.com

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.335(2018年7月1日発行)」に掲載されたものです。

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