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会計・税務相談

2018年6月28日

Q.企業の研究開発活動に生じる費用のシンガポール税制上の取り扱いについて教えてください。

企業の研究開発費に対するシンガポール税制上の取り扱いについて

企業の研究開発活動に生じる費用は多くの場合、所得税法による損金の原則である「専らかつ完全に所得を得るための活動に生じた費用」とは言いがたいため、その控除について、通常の損金とは別に定められています。

 

Q:どのような控除が認められていますか?

A: 所得税法第14D条により、適格な研究開発活動に生じた費用全般について、一般の損金と同様の100%の控除が認められています。さらに、所得税法第14DA条により、研究開発費のうち人件費と材料費について、2019賦課年度から2025賦課年度まで、150%の追加控除が認められています。

 

Q:どのような場合に研究開発費の控除を申請できるのでしょうか?

A: 下記の要件をすべて満たす場合に、控除を申請することができます。
①所得税法に定められる「適格な研究開発」であること
②納税者が研究開発活動のために支出した適格な費用であること
③納税者が研究開発活動の成果物であるノウハウや知的財産権などを所有し、その経済的利益の受益者であること

 

Q:「適格な研究開発」とは、どのようなものを指すのでしょうか?

A: 下記の要件をすべて満たす研究開発活動が「適格な研究開発」とされています。
①以下のいずれかを目的とする研究開発であること
 a)新しい知識を獲得する
 b)新しい製品または製法を生み出す
 c)既存の製品または製法を改良する
②新規性または技術的リスクのいずれかを伴う研究開発であること
③化学技術分野において体系的、調査的かつ実験的な研究開発であること

 

Q:研究開発活動は自社で行なったものに限られますか?

A: 研究開発活動は、必ずしもすべてを自社で行う必要はなく、その一部または全部を外部に委託することもできます。シンガポール国内の外部機関に委託した場合、所得税法第14DA条で認められている追加控除は、請求された費用のうちの人件費および材料費の実費、または費用総額の60%の高い方の金額に適用されます。

 

Q:シンガポール国外で行われた研究開発活動についても控除は認められますか?

A: 研究開発活動がシンガポール国外で行われた場合、自社によるものであっても外部委託によるものであっても、納税者が現在収益を得ている事業に関連するものであれば、所得税法第14D条による100%の所得控除は認められます。ただし、所得税法第14DA条による追加所得控除は、シンガポール国内で行われた研究開発活動に限られており、国外で行われた部分には適用されません。

 

Q:控除はいつ申請することができますか?

A: 控除は研究開発費が生じた会計年度について申請します。研究開発活動のために新しく設立された会社でまだ収益がない場合、収益が発生する以前に生じた研究開発費は、最初の収益が発生した日に生じたものと見なされます。

 

Q:控除の申請は、どのように行えば良いですか?

A: 原則として事前に申請する必要はなく、税務申告の際に控除申請書を提出します。内国歳入庁(IRAS)は、申請書にもとづき対象となるA: プロジェクトが税法上の「適格な研究開発」の要件を満たしているかどうかを審査した上で、控除を認めます。申請書だけでは不十分と判断された場合には追加の資料の提出を求められるので、あらかじめプロジェクトの一部始終に関する資料を揃えておくことが重要です。なお、「適格な研究開発」として認められるかどうかを確認した上でプロジェクトを進めたい場合は、総費用が2,000万Sドル以上のプロジェクトに限り、IRASに事前審査を申請することもできます。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.335(2018年7月1日発行)」に掲載されたものです。

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