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ビジネスインタビュー

2018年4月30日

【ジュエリーブランド ARIEL.C 創業者】シワ・アリエル・チェンさん

大量消費型でなく自己表現のためのジュエリー。ロンドンで修行を積んだデザイナーによる人気ブランド

 シンガポールでよく見かけるジュエリーブランドは、小ぶりのシルバーやゴールドなど小さくて可愛らしい、所謂“主張しない”デザインのアイテムばかり。でも『AsiaX』読者には、かわいいだけのジュエリーはもったいない!そこで、もっと先鋭的で自立した女性に似合うスタイルを提案する、今シンガポールのポップアップマーケットで引っ張りだこのファッション・ジュエリーブランド『ARIEL.C(アリエル・シー)』を紹介したい。ロンドンの大学で学んだ後、シンガポールでオリジナルブランドを立ち上げたシワ・アリエル・チェンさんに話を聞きました。

 

ARIEL.C創業に至るまでの経緯を教えて下さい。

 シンガポールのファッション業界で数年働いた後、イギリスの『ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(ロンドン芸術大学)』にファッションジュエリーの学位取得のため留学しました。最終学年在籍時に自分のブランドを立ち上げ、卒業後シンガポールに帰国。ファッションの最先端だったロンドンからの帰路では、小さな未知の市場に帰るようで複雑な思いがありました。シンガポールの市場について、またローカルアーティストやデザイナーへのサポート体制が十分かどうかよく分からなかったためです。それでも挑戦することを決めました。ロンドンで見たようなジュエリーのバラエティーの豊富さは、同じスタイルに傾倒するシンガポールでは見かけないものです。私のブランドで提案するデザインも、シンガポールの人にとって初めて見るような、個性的で先鋭的なスタイルです。

 

ARIEL.Cのジュエリーの特徴やこだわりは?

 まずは、タッセルモチーフ。2015、2016年頃からよく見かけるようになりましたが、私の提案するタッセルモチーフは、ローズクウォーツやパールなどの半貴石と合わせて、ポンポン飾り、レース、バラ飾りなど遊び心あるエレメントと組み合わせるため、外見はユニークです。硬い素材と柔らかい素材を組み合わせて、質感にもこだわっています。個人的には、ガーリーなものよりもエレガント、エッジーなスタイルが好きで、私のジュエリーにもその好みが反映されています。そして環境に優しい素材や、スロー・ファッションにこだわっています。

 

 

スロー・ファッションにこだわる理由を教えてください。

 今、巷にはファストファッションがあふれています。低いコストでの大量生産で生産スピードを上げるために、製造過程や素材が環境にやさしいとは言えないことが問題視されています。消費者はまた、ファッションアイテムが“使い捨て”という意識を持つようになります。大量消費の末の大量廃棄の流れは、地球環境にとって望ましくありません。そのため、私はスロー・ファッションを支持しています。私のジュエリーは一つ一つデザインが異なり、ハンドメイドで素材も環境にやさしいものを使用していますし、地球環境保護が作品作りのインスピレーションとなることもあります。お客様は人と違うジュエリーを付けることに特別感をもち、自分の個性を語るようなジュエリーだと感じる、これがスロー・ファッションのもたらす良い効果なのです。

 

作品のインスピレーションは、環境保護の他にもありますか?

 目にするもの、出会う人、事柄すべてです。例えば会話、旅の記憶、伝統技術や絵画。日本のヴィンテージ着物や、組紐、印象派の絵画など。最近では『エドガー・ドガ』のバレリーナの絵画からインスピレーションを受けました。 シンガポールの『ナショナル・ギャラリー』で2018年3月まで開催された印象派展で見たオルセー美術館からの絵画には、特に心が動かされました。この経験が、私の作品に、色や質感、陰影の表現の点で生かされています。

 

日本の組紐をモチーフにした作品が確かに多くありますね。

 はい。これは、アップサイクル(リサイクルの進化版。廃棄物や不要物をより良い製品にして価値を高めること)の考えに賛同するためです。2015年、2016年にヴィンテージ着物とのコラボレーションをしましたが、その際日本の着物への興味を、強く持つようになりました。着物、帯、帯締めを見て、インスピレーションをどんどん作品に生かそうと考えたのです。ロンドン在住時に、有名なファッションデザイナーであるメアリー・カトランズのもとでインターンをした際に、組紐を取り入れるようになりました。異なる素材を使うことにより、モダンでファンキーなテイストを加えることができ、創造性が広がります。着物、組紐は私のブランドの中核となるモチーフとなっています。

 

 

両親の世代は特に超学歴主義のシンガポール。クリエイティブな仕事で食べていくことや理解を得るのは困難ではないですか?

 その通りです。“アイアン・ライスボウル”という言葉がありますが、両親の時代は学校で良い成績をおさめ、安定性のある仕事に就くことが理想とされてきました。私の両親は、私の仕事について100%賛成しているとは言えず色々な思いがあると察しています。でも、若いうちにやりたいことに挑戦したいし、両親は私のそんな頑固な性格を分かっています。ポップアップマーケットに出店する際に応援しに来て、家族のためにジュエリーを作って欲しいと要望するなど、彼らなりのやり方でサポートしてくれています。幸い、最近はポップアップマーケットが多数開催されており、ローカルでジュエリー、ファッションアーティストの小さなブランドを持つ人が出店する機会が多く設けられています。

 

お客様のプロフィールは?

 20代後半から40代、50代で特に独立した働く女性です。ハンドメイド、アートが好きで、個性的なデザインを求めるような女性です。なので、ジュエリーのカスタマイズオーダーもよく受けています。

 

現在および今後の出店予定を教えてください。

 2018年4月17日〜22日までイタリア・ミラノで開催される大イベント『Din–Design In』に出店しました。また5月には、クラークキーの『McGettigan’s ClarkeQuay』で開催される世界的チャリティ・イベント『ワールドベリーダンスデイ・シンガポール』のチャリティ・ポップアップマーケットに出店します。

 

今後のビジネス展開についてお聞かせください。

 特にヨーロッパ、日本や香港などで、ブランドの海外展開を促進していきます。これまでも開催しましたがワークショップを今年後半に再び開催し、ジュエリーの作り方を教えていきたいです。また、私はデザイナーやアーティストとのコラボ、チャリティーを通して社会貢献をすることが好きなので、ブランドがより環境社会にやさしいサステナビリティー高いものとなるよう、育てていきたいです。

 

最後になりますが、子供の頃の夢は?

 考古学者!古代エジブト文明に興味があったためです。また絵を描くなどアートに関することが好きでした。子供の頃、母はよくジュエリーを買い集めて私に見せてくれました。その経験は今のジュエリーへの興味やデザイナーになる決断に影響していると思います。

 


 
シワ・アリエル・チェン
ARIEL.C創業者

 

シンガポール出身。ファッション業界勤務の後、2014年にロンドン芸術大学でファッションジュエリーを学び学士号取得。自身のブランド『ARIEL.C』を立ち上げ、オシャレな服飾品や雑貨ブランドが厳しく選抜され出店する『ブティック・フェアー』に招聘されるなど、国内外を代表するポップアップマーケットやイベントに出店中。
https://www.arielchen.com/

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.333(2018年5月1日発行)」に掲載されたものです。(取材・写真: 舞 スーリ)

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