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座談会

2018年4月25日

増加する訪星外国人と転換期の観光・ホテル産業

ホテルを使いこなす欧米人

AsiaX:今年はシンガポールが東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の議長国を務めることもあり、ビジネス関連も多忙な1年になると言われています。日本と異なる点、そして日本人と外国人のホテルの楽しみ方、あるいは活用の仕方には違いがありますか。

 

島田:私は来星してまだ3週間ですが、日本での営業活動ではまずお会いできないような、東南アジアの財閥トップや企業トップと直接お会いする機会が頻繁にあります。そのような場合、エージェントを通さず秘書から直接連絡がありますね。この国ならではと感じています。

 

佐藤:以前は日本人や中国人は大型ツアーに参加するケースが多かったのですが、ここ数年、個人旅行にシフトしていると感じています。一方、欧米系は家族と一緒に1週間以上ゆっくりと過ごされることが多いですね。日本とは休暇取得環境が違いますが、長期で楽しんでいます。また、70代、80代でも一人旅を楽しむ人がいます。例えば、透析レベルの持病を抱えていても事前にそれを伝えて、1ヵ月、2ヵ月旅行を楽しむ人もいます。日本人にはないスタイルですね。ただ、日本人にも、退職後にミニ留学してマレーシアやフィリピンに滞在する人が増えていますし、今後はさらに海外渡航が盛んになっていくと思います。

 

折山:当社は、コーポレートを組む日系商社などのお客様が中心で、1泊だけのご利用も非常に多いです。早朝の到着後、仮眠をとるためだけの宿泊も普通です。また、ツアー客は、旅行会社を通してのご利用が多く、滞在中はオプショナルツアーに沿って動かれるため、ホテルを楽しむのは二の次という感じがします。
サービス対応に関していえば、日本人は「察して欲しい」という文化で、「こうして欲しい」という気持ちを途中までしか伝えない傾向があるかと思います。解決策を案内しても、後に「もっとこうして欲しかった」という趣旨のアンケート回答が寄せられたりしますので、こちらから深くコミュニケーションをとることを心掛けています。外国人のお客様は、具体的にこうして欲しいと明確に説明いただけますね。

 

ホテルにもオートメーション化の波

AsiaX:リー・シェンロン首相が、ナショナル・デーのスピーチの中で、国を快適にするための計画のひとつとしてオートメーション化を挙げていました。ホテルサービス分野でも導入が進んでいますか?

 

佐藤:オートメーション化は既に始めており、セルフチェックイン機、サービスロボット、客室のイントラネットTVサービス、プールサイドからスクリーンを使って食事のオーダーができるシステム等、社内ではデータベース、セキュリティ、省エネ、仕入れ管理等で導入しています。また、今後We Chat PayとAli Payを当社シンガポールグループホテルで導入していきます。ひとつ懸念されているのは、世間でも危惧されている「人の仕事がなくなってしまうのではないか」という問題ですが、これから取り入れていくのは基本作業的な内容にとどめ、削減された時間を有効活用し、生身の人間は伝統を大事にしながら、おもてなしやホスピタリティを提供しつつ、サービスの質を上げていきたいと考えています。一方、「これは取り入れてみたい!」と思っているのは、日本のホテルで見た両替機です。

 

島田:当社では、日本で両替機を5年ほど前から導入しています。訪日外国人数の増加とともに、国籍の多様化が急速に進むなかで、両替を求められる貨幣の種類も増えましたし、(両替機は)数え間違いの心配もありません。

 

佐藤:偽札の判断という観点からも安心ですね。

 

折山:当社は、ややアナログですね。記帳は手書きですし、両替はフロントで行なっています。某ホテルではペーパーレスのサービスを積極的に行っています。部屋が早く欲しいというお客様には、用意ができた段階ですぐにメールがいくそうです。

 

佐藤:当社では、2016年にエムソーシャルホテルが東南アジアで初めてデリバリーロボットAURA (Autonomous Room Service Associate)を導入しました。米国シリコンバレーに本社を置くサイボーグ社製ロボットです。現在は当社の5ホテル全てで導入しています。客室にタオルやお水などを届ける際、ハウスキーピングに電話をいただいてから通常は15分ほどかかりますが、ロボットなら5分でお届けできますし、人件費の削減にもなります。約600の客室があるホテルもあり、ハウスキーピングの雇用はホテル業界の課題でもあります。
また、2017年には、卵焼きを作るロボットAUSCA (Autonomous Service Chef Associate)が朝食会場に登場しました。

 

野口:卵焼きのロボットは、人型ですか?

 

佐藤:いえ、四角いです(笑)メイド・イン・シンガポールです。野菜を混ぜた卵も焼けたりします。お子様にも大変好評です。

 

AsiaX:お子様の話が出ましたが、シンガポールのホテルのファミリー向けサービスはいかがでしょうか?

 

島田:先日、リニューアルをしたシャングリラホテルに行く機会があったのですが、ファイブスターホテルの伝統を守りながらも、キッズフレンドリーなサービスを柔軟に取り入れていることに驚きました。巨大なキッズプレイスペース、子供のための調理体験教室、お絵描き教室までありました。家族連れ専用の特別階には、おむつや離乳食なども用意されていて、安心してホテルに遊びに行くことができるとても素晴らしいサービスでした。

 

佐藤:当社ホテルにもナニールームがあり、保育士を雇っています。子供をホテルに預けてから会議に出る、という人もいます。インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムなどアジアからのビジネスマンはシンガポールでの会議やコンベンションに参加する際、家族連れの場合が少なくなくありません。ここは、日本人とは違いますね。その場合には、奥様パッケージをご用意して、お子様のケアをさせていただくこともあります。

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