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シンガポール予算案

2018年3月26日

2018年度シンガポール予算案のポイント

シンガポール政府はこのほど2018年度の予算を上程しました。この中で発表された税制改正について主なものを取り上げ、そのポイントを解説します。

 

法人税の税額控除

昨年度の予算案では、2018賦課年度について20%の税額控除(限度額S$10,000)が約束されましたが、今年度の予算案では、2018賦課年度の税額控除を40%(限度額S$15,000)に引き上げること、並びに2019賦課年度について20%の税額控除(限度額S$10,000)を適用することが発表されました。

 

部分免税所得の縮小

現行では、法人の課税所得のうち、最初のS$10,000までの所得の75%、および次のS$290,000までの所得の50%について免税とされていますが、2020賦課年度より、最初のS$10,000までの所得の75%、および次のS$190,000までの所得の50%に縮小されることになりました。

 

これにより、例えば、免税所得控除前の課税所得がS$300,000の法人について2018賦課年度と2020賦課年度の法人税(税額控除適用前)を比較すると、税額はS$25,075からS$33,575に、また実効税率は8.36%から11.19%に増えることになります。人口の高齢化により社会保障費などの歳出の増加が見込まれることを受け、これまで下がる一方であったシンガポールの法人税も、ついに増税に向けて舵が切られることになりました。

 

 

同じく、個人を含む株主による新設法人の最初の3賦課年度に適用される課税所得の部分免税についても、現行では最初のS$100,000までの所得の100%、および次のS$200,000までの所得の50%について免税とされていますが、2020賦課年度より、最初のS$100,000までの所得の75%、および次のS$100,000までの所得の50%に縮小されます。

 

研究開発費

シンガポール国内で行われた適格な研究開発活動は、所得税法第14D条および第14DA条により、人件費および材料費について150%、その他の費用について100%の所得控除が認められています。今後も引き続き企業による技術革新を支援するため、2019賦課年度から2025賦課年度まで、シンガポールで行われる適格な研究開発活動について、人件費および材料費に関する所得控除が250%に引き上げられることになりました。現行で適用されているその他の要件については変更ありません。

 

知的財産登録費用

知的財産の登録に関する適格な費用は、所得税法第14A条により100%の所得控除が認められていますが、この制度は2020賦課年度までの時限措置とされていました。企業、特に中小企業による知的財産の登録を支援するため、当該制度を2025賦課年度まで延長し、かつ2019賦課年度から2025賦課年度まで、各賦課年度につきS$100,000を限度として200%の所得控除が認められることになりました。

 

知的財産の導入料

特許やノウハウなどの適格な知的財産の導入料(In-licensing fees)の支払いは、所得税法第14条または第14D条により100%の所得控除が認められていますが、企業が特許やノウハウなどの導入権を購入して事業に活用しやすくなるように、2019賦課年度より2025賦課年度まで、各賦課年度につきS$100,000を限度として200%の所得控除が認められることになりました。但し、関連会社への支払いは、適用の対象になりません。

 

国際化制度(DTDi)による所得控除の拡大

商品の販売やサービスの提供を主たる事業とする企業による海外市場への進出を支援する国際化制度では、適格な活動の費用について200%の所得控除が認められていますが、原則として当該活動を開始する前にシンガポール国際企業庁またはシンガポール観光局に申請し、承認を受けることが要件とされています。但し、下記の適格活動に関する費用については、各賦課年度につきS$100,000を限度として、事前に承認を受けずに控除することが認められています。

 

• 海外での市場開拓のための出張・視察団参加費用
• 海外での新規投資調査のための出張・視察団参加費用
• 海外で開催される貿易展示会の出展費用
• シンガポール国内で開催される認可された貿易展示会の出展費用

 

シンガポールの企業による海外進出を更に後押しするため、2019賦課年度より、事前承認なく200%の所得控除が認められる費用の限度額がS$150,000に引き上げられることになりました。改正の詳細は、2018年4月までにシンガポール国際企業庁およびシンガポール観光局により発表される予定です。

 

商品・サービス税(GST)の税率の引き上げ

シンガポールの付加価値税であるGSTは、2007年7月1日以来7%に据え置かれていますが、医療費など今後増えるであろう国の歳出に充てる財源を確保するため、2021年から2025年のいずれかの時点でGSTの税率を9%まで引き上げることが発表されました。具体的な時期については明言されておらず、国の財政の状況を見ながら必要と判断された時期に引き上げるとの言及にとどまっています。

 

付加価値税を導入している諸外国では、既に税率が10%以上の国が大半を占めており、シンガポールのGSTが9%に引き上げられたとしても、国際比較においては依然として低い方の部類であると言えます。

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