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2018年3月1日

第4回 ジャカルタの路上の緑ヘル軍団 〜バイクとクルマの配車アプリ〜

鉄道やバスなど公共交通機関の未発達なインドネシアでバイクや車の配車アプリを使ったサービスが爆発的に普及し新しいモビリティの主役になっています。GO-JEK、グラブ、ウーバーの三つ巴の戦いはますます激化の一途をたどっています。

 

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スディルマン通りを埋め尽くす緑ヘル軍団

 

利便性に加え秩序と機会を作ったバイクの配車アプリ

インドネシアのメインストリート・スディルマン通り。緑のヘルメットに緑のジャケットという出で立ちのバイクの運転手があちこちに見られます。これがインドネシア名物とも言える配車アプリのバイクタクシーです。

 

バイクタクシーはもともとインドネシアで自然発生的に出てきた交通手段で、『オジェックOjek』と言って都市部での『チョイ乗り用』として使われていました。ただし誰でも気軽にできる『食い詰め者のチョイ仕事』なので、ユーザーにとっては安いが危険でストレスフルな『ぼったくられ』覚悟の交通手段という一面もありました。

 

そのゴジェックがスマホを使った配車アプリというプラットフォームによって、安全、安心、明朗会計の安価な新しい交通システムに変身。オジェックOjekをもじったGO-JEKはあっという間にインドネシア全土に広がって行きました。

 

ユーザーはスマホにアプリを入れ、目的地を入力すると料金が出る。近くのバイクが配車され、やってきたバイクの運転手から渡された『ちょっと臭うヘルメット』を被ってバイクの後席にまたがる。目的地についたら最初に提示された料金を払っておしまい。運転手の評価も領収書も全てスマホで済む。

 

一方、運転手になって稼ぎたい人もバイクさえあればアプリで簡単にドライバー登録しすぐに仕事をはじめることができ、雇用創出効果も大変大きいシステムなのです。

 

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グラブのレンタル部門に殺到するドライバー応募者。

 

パイオニアであるGO-JEKに追随する形で、クルマの配車アプリがメインのグラブやウーバーもバイクタクシーに参入し現在は三つ巴の戦いになっています。乗車客を取り込もうと激しいプロモーション合戦を行う一方、ドライバーの確保競争も熾烈なものがあるようです。

 

3社の配車アプリがバイクタクシーに秩序とルール、雇用機会まで生み出したという社会的意義は大変大きく、政府も規制をかけるどころか歓迎の姿勢を示しています。まさに、民間企業がアプリの力を得て作ったモビリティシステムなのです。

 

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グラブ専用の乗降ポイント

 

既得権との戦いとなったクルマの配車アプリ

一方、グラブが始めた『クルマ』の配車アプリ。競合相手は既存のタクシー。こちらはバイクタクシーとは違って、当局の監督のもと、いくつかのタクシー会社が既にビジネスを展開していました。ブルーバードといった保有台数3万台もある大手も存在していて言わば既得権の塊。

 

とはいえ、インドネシアのタクシー会社の中にはかなり怪しげな輩もあって、必ずしもトータル・サービスが良いとは言えず。バイクと同じくクルマの配車アプリもその圧倒的な利便性や透明性、価格競争力でタクシーのお客をどんどん取り始め、政府も業界も大慌てになりました。2015年にはタクシー業界で組織された運転手の大規模デモが配車アプリの禁止を主張しスディルマン通りを占拠するという事件も起こりました。

 

タクシー業界だけでなく、政府もグラブやウーバー(後にGO-JEKもクルマ配車アプリに参入)のビジネスモデル自体の革新性に対して右往左往となりいろいろな規制を打ち出しました。極め付きは『配車アプリ事業者はレンタカー業ライセンスを取れ』という法規制でした。最終的にはこの法令は最高裁で否決されたのですが、グラブは業界との共存も必要と考え、既存ビジネスと並行してレンタカー会社を設置。結果クルマを持っていなくて気軽に車を借りてタクシービジネスを始めることができるようになり、ドライバーは増えたが質が悪くなっているようです。今度は『食い詰め者のチョイ仕事』つまり昔のバイクタクシーの様になってきたという皮肉な現象が起こっています。

 

シンがポールでは政府が正式に認めているグラブやウーバー。ちょっと安価でそれなりの交通手段としてタクシーとうまく共存しているようですが、さてインドネシアの配車アプリは今度どういう進化(退化)を遂げて行くのでしょうか?

プロフィール

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藤井 真治(ふじい しんじ)

(株)APスターコンサルティング
アジア企業戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー

自動車メーカーの広報部門、海外部門、新規事業部門経験30年以上。インドネシア/香港現地法人トップとして海外での企業マネジメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業を支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応えます。『現地現物現実』を重視し、クライアントと一緒に汗をかくことがポリシー。
Website: www.ap-star.jp  E-mail: fujii258@gmail.com

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.331(2018年3月1日発行)」に掲載されたものです。

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