シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP雇用主が負担した保険料の税務上の取り扱いについて教えてください。

会計・税務相談

2018年3月1日

Q.雇用主が負担した保険料の税務上の取り扱いについて教えてください。

従業員を被保険者とする保険の税務上の取り扱いについて

雇用主が福利厚生などの目的で従業員を被保険者とする保険の保険料を負担した場合、当該保険料は原則として現物給与であり、課税所得として雇用所得申告書(FORM IR8AおよびAPPENDIX 8A)に申告する必要があります。

 

Q:すべての保険の保険料が課税対象になるのでしょうか。

A: 従業員個人が契約者である保険の保険料を雇用主が負担した場合には、すべて課税対象となります。雇用主が契約者であり、従業員を被保険者とする団体保険については、さらに詳細を確認する必要があります。なお、労働災害補償法にもとづき雇用主が負担すべき費用を補償する労働災害補償保険と、従業員がシンガポール以外の国へ出張する際の病気や事故の費用を補償する海外旅行保険の保険料については、免税とされています。

 

Q:従業員を対象にした医療保険の保険料も課税対象になるのでしょうか。

A: 雇用主が契約者であり、従業員を被保険者とする入院保険などの団体医療保険については、雇用するすべての従業員に保険が適用されていれば、免税とされます。そうではなく、一部の従業員のみを対象にしている場合には、保険料は当該従業員の課税所得となります。なお、ここでいう医療保険は、あくまでも従業員に生じた入院費や治療費などの実費を支払う保険をさしています。

 

Q:雇用主が契約者である医療保険以外の団体保険について、課税所得となるかどうかはどうやって判断すればよいのでしょうか。

A: 医療保険以外の団体保険、例えば、生命保険や傷害保険などについては、以下の質問にそって判断してみてください。

 

☑従業員やその家族が契約上の保険金の受取人に指定されているか
従業員やその家族が契約上の保険金の受取人である場合、保険料は従業員の課税所得となります。

 

☑従業員やその家族が契約上の保険金の受取人でない場合、雇用契約や就業規則、労使協定などにより、保険金が従業員やその家族に支払われることが定められているか

 

保険金が従業員やその家族に支払われることがあらかじめ定められていれば、保険料は従業員の課税所得となります。

 

☑雇用主が契約上の保険金の受取人であり、従業員やその家族に保険金を支払うかどうかは雇用主の裁量に委ねられているか
雇用主が契約上の保険金の受取人であり、その保険金の取り扱いについては雇用主に裁量がある場合、保険料は従業員の課税所得にはなりません。ただし、当該保険料は営業上の費用ではなく資本的支出と見なされるため、雇用主はこの保険料を損金として処理することはできません。

 

Q: 個々の従業員ごとに保険料を調べて課税所得であるかどうかを判断し、申告するのは面倒な作業なので、もっと簡単に申告する方法はないのでしょうか。

A: 2013賦課年度(2012年の所得)より、保険料が従業員の課税所得となる場合であっても、雇用主が当該保険料を損金として処理しないことを選択すれば、従業員については免税所得とすることが認められています。雇用主は、いったんこの取り扱いを選択したら、すべての従業員について毎年同じように当該保険料を損金不算入として処理し続けなければなりません。なお、この取り扱いは、投資持株会社および費用に一定率の利益を上乗せする方法で税務申告するサービス会社については、適用が認められていません。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.332(2018年3月1日発行)」に掲載されたものです。

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