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シンガポール星層解明

2018年2月28日

ドンキが“ディスラプト”するシンガポールの食品スーパー事情

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ドン・キホーテ1号店がオープン、店名はドンドンドンキ(2017年12月4日)
https://www.asiax.biz/news/45242

2018年6月期の決算で29期連続の営業増益が見込まれている「勝ち組小売企業」のドン・キホーテが昨年12月にシンガポールに進出してから2ヵ月あまりが経過した。昨年10月の当欄「ドン・キホーテが変革するシンガポールの小売業界」では、「日常使いの店」や「安定した調達・物流網」を構築できるか否かが多店舗展開を成功させる上でカギと述べたが、実際はどうなのか。本稿では、ドンキの進出によって少なからず事業の軌道修正を強いられるとみるシンガポールの明治屋と伊勢丹(スコッツ店)も交えた3社の品揃えや価格の特徴を比較した上で、ドンキの更なる飛躍に向けた課題を考察していきたい。

 

「使える食品スーパー」を前面に出店
在星日本人の購買行動に多大な影響

シンガポールには既に「ドン・キホーテ」なる飲食店が存在することから、「ドンドンドンキ(以下、ドンキ)」の屋号でオーチャード・セントラルに東南アジア1号店を開店したドン・キホーテ。日本では日用品や雑貨に加えて加工食品を格安で販売している印象が強いが、現地消費者に日本の食材をもっと身近に楽しんでもらいたいという創業者の思いもあり、当地では青果や鮮魚、精肉といった生鮮食品も幅広くリーズナブルに取り扱う食品スーパーの色合いが濃い。地下2階の悪立地にも関わらず駅近が幸いしてか、食品フロアは平日でも客足が絶えず、これまでは明治屋や伊勢丹などで生鮮食品を含めた日本産の食材を買い求めていた在星日本人の多数もドンキにシフトしているであろう現状は、想像に難くない。

 

またドン・キホーテは、日本でインバウンド(訪日外国人)に対する取り組みも本格的に進めていたこともあり、増加傾向にある訪日シンガポール人の間でも定番の買物スポットになっている。そのためドンキの知名度は当地でも高く、昼食の時間帯には弁当や総菜を、そして夕方にはお菓子や焼き芋などを、行列を成してでも買い求める地元の老若男女で店内は賑わいを見せている。

 

ドンキの人気は、日本から派遣された日本人社員の予想をも上回っていたようで、連日レジには長蛇の列ができていた。そこで1月後半には2日間も店舗を閉鎖した上で店内レイアウトの変更を敢行。レジを増設し、同時に不慣れな操作で時間を要するセルフレジや店員による袋詰め作業を廃止することでレジの待ち時間の削減に取り組んでいる。他にもこの店舗閉鎖の期間には、アイスや飲料のショーケースを「ついで買い」が期待できるレジ前へ移設し、また需要が少ないと判断されたであろうお土産売場は縮小し、そして文房具売場は隣接する東急ハンズを訪れた客にも訴求しやすい視認性の高いエリアに移設するなど、購買体験の改善には余念がない姿勢が伺える。

 

ドンキの青果は大多数が日本産
人気商品は圧倒的な品揃えで差別化

日本産の食材で調理をしたい消費者にとって、鮮度や安全性がものを言う生鮮食品(青果、鮮魚、精肉)の品揃えは、買い物をする店を決定する際に重要な要素となる。そこで図1に青果(野菜・果物)を例にして明治屋、伊勢丹、そしてドンキの品揃えを比較した。興味深いことに、日本産に限ってみると、伊勢丹とドンキの品揃えはほぼ互角であり、ドンキは同じオーチャード通りに位置する伊勢丹の品揃えをベンチマークにしている可能性を示している。またドンキは野菜の80%以上、果物においては100%が日本産であることからも純粋な「日本のスーパー」と呼べるが、青果の半数以上を日本産以外が占めている「日系スーパー」の明治屋と伊勢丹は、開店からそれぞれ10年、20年以上の時を経て日本人以外の消費者からも支持されているであろうことが読み取れる。

 

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図2に生鮮食品以外の一部カテゴリの品揃えを比較した。納豆を筆頭に、カップ麺、牛乳・加工乳、たまごといった日々の利用が想定される基本食材においては明治屋の品揃えの強さが目立っている。一方で、ドンキが日本産のウイスキーを40アイテムも取り揃えている点は特筆すべきであり、シンガポールで人気が高い商材に関しては群を抜く品揃えで消費者に訴求を試みている例と言えよう。

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