シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP新年である2018年、節目にあたる2020年、各業界の最新事情と...

座談会

2018年1月26日

新年である2018年、節目にあたる2020年、各業界の最新事情と未来予測

自動車、医療、教育、観光。
注目が集まる、そのワケは?

AsiaX:新年初の座談会となる今回は、2018年のシンガポールで中心トピックとなるだろう4業界のお話を伺いたく、皆さんにお集まりいただきました。自動車、医療、教育業界のお三方をお招きしたのは、2017年の独立記念日にリー・シェンロン首相が発表した「施政方針演説」を受けてのことです。

 

【自動車業界】藤井:スマート国家の建設、糖尿病対策、就学前教育の充実という3本柱が示されましたね。

 

AsiaX:例えば近年の自動運転による無人タクシーの試験運行のように、首相の声明が出る前から、各業界、動きはあったと思うのです。が、施政方針演説以降、その動きが早まった、なんてことはあるのでしょうか?2017年10月に発表された自家用車保有の伸び率0%設定は、車の台数制限をしてスマート国家建設を急ごうという流れなのかな、なんて思ったのですが。

 

藤井:それはあるかもしれませんね。インドネシアは100万台市場、タイは80万台市場と言われる中で、シンガポールは自動車を作っていないので、そもそも自動車産業そのものがありません。となると、この国は政府主導によるモビリティ・コントロールが進めやすいですし、自動車業界で言われるCASE(Connected、Autonomas、Shared-mobility、Electric-mobility)の試験場として最適だと考えられます。

 

AsiaX:CASE、ですか?

 

藤井:先ほどおっしゃっていた自動運転はまさに、C、Aにあたります。Sの部分も、UBERやGrabが浸透し、シェアに近づいている。電気自動車の充電ステーションが不十分である点では、まだまだEが発達しているとは言い難いですが、今後、整備されてくるはず。それに自動運転ソフトの製作会社等を誘致しているなんて話も耳にします。IT企業や自動車会社が、こうして種を蒔いているものがどう芽吹くかは、私にとっても興味深い点です。

 

JLXP0167

2017年8月、新興企業ヌートノミー主導にて、世界初となる自動運転タクシーサービスの試験走行が当地でスタートした。

 

AsiaX:そうなると、自動車は自分で運転するものじゃなくなっていくのでしょうか。

 

藤井:もともとシンガポールはGDPが高い割に自動車保有台数が少ないのです。じゃあ自動車保有がなくなるか、自動化で運転しなくなるかというと、しばらくはそこまでいかないんじゃないかな?

 

AsiaX:スマート国家やオートメーション化の話は、自動車に限ったことではありませんよね。医療の世界にも関係していそうですが、いかがですか?

 

【医療業界】佐藤:そうですね、日本同様に少子高齢化が進むシンガポールでは、この先、医療関係の人材も減少し、人手不足になることが予想されます。そこで進められているのが、労力を減らし、少人数で効率よく稼働できるオートメーション体制です。

 

藤井:そうそう、シンガポールは高齢化しているのですよね。電車で席を譲られることがあって、まだそんな年齢じゃないよと慌てて周囲を見渡すと若者が多いから、国民の平均年齢は若いのかと勘違いしていました(笑)。

 

佐藤:65歳以上が総人口に占める割合の「高齢化率」が、7%が高齢化社会、14%が高齢社会。高齢化社会から高齢社会へ移行するのに、日本は24年かかっているところを、当地はわずか16年。急速に進んでいるのです。

 

AsiaX:そういった効率的な運用に向け、何か具体策は施行されているのですか?

 

佐藤:受診されたかたがスムーズに診療を受けられるようにしています。アプリを活用して複数の診療科を受診する際は、受診登録から支払いまで一括管理して病院の滞在時間が短くなるようにしたり、入院する場合、診療内容以外のデータも管理して入院期間を短くする、あるいは空いたベッドにすぐに入院できるようにしたり。

 

AsiaX:なるほど。首相の声明にあった、糖尿病対策についても教えてください。

 

佐藤:糖尿病について取り沙汰されるようになったのは、2016年4月頃からと、意外と最近なのです。そこから一気に対策気運が持ち上がって、ホーカーセンターにカロリー表示がされるようになりました。糖尿病は食生活の影響が大きいですから。

 

AsiaX:でも、習慣的に食べてきたものを変えることは難しそうですね。2012年に、肥満対策としてマレーシアでナシレマ制限がなされていましたが、結局、減らなかったようです。

 

佐藤:大事なのは、今の食生活が糖尿病には良くないという認識を持つこと。ホーカーで飲むコーヒーはおいしいけれど、とても甘いですよね。糖尿病が自分の健康上で問題になるのは10年後、20年後ですから、今から糖分を減らしていくに越したことはありません。飲み物に関して言えば、清涼飲料メーカーに対し、2020年以降は発泡性飲料や果汁飲料の砂糖含有量を12%以下に減らすことが発表されています。

 

藤井:そういえば日本人って主食が米で糖質なのに、糖尿病をあまり発症しませんね。

 

佐藤:米以外の糖分をいかに減らすか、もしくはバランスよく食べるかですよね。糖尿病患者に向けた日本食の提供などを行う日本の食品メーカーが進出してくるといいのですが……。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP新年である2018年、節目にあたる2020年、各業界の最新事情と...