シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP日本で飲食店を経営しており、このたびシンガポールに進出しました。...

法律相談

2017年12月1日

Q.日本で飲食店を経営しており、このたびシンガポールに進出しました。日本でのブランドを活かすために、店名やロゴ、名物となるメニューの名前など、日本で商標登録したものをそのまま使用したいのですが、シンガポールでの商標登録にはどのような手続きが必要ですか。

シンガポールでの商標出願

A: シンガポール特許庁(Intellectual Property Office of Singapore、IPOS)への商標登録出願が必要です。具体的には、願書やその他の必要書類を準備し、IPOSに提出することになります。出願料はオンライン出願の場合S$341になります(なお、一定の条件を満たすと出願料がS$240にディスカウントされます)。
※上記のルールは2017年10月現在のものです。 ※上記には代理人に依頼する場合の費用は含まれません。

 

出願の際に必要な情報は、一般的には、①出願者の名前、②出願者の住所、③商標、④商標の英訳および(ロゴの場合)描写、⑤商標の分類、⑥優先権の有無などです。
④商標の英訳とは、例えば「地獄ラーメン」であれば、「Hell ramen noodle」(一例)などで、ロゴの描写とは「四角の中に丸があって、背景が黄色で……。」(一例)などと英語で説明した文章です。これらは、商標の審査官が審査の際、識別性や記述性を判断する際の参考にし、登録後は、第三者が同一商標の有無を調査する際などに利用されます。
⑤商標の分類とは、楽器であればクラス15、ビールならクラス32などと定められており、出願する商標がどの商品分類にあたるかを明記することになります。
⑥優先権の有無とは、過去6ヵ月以内にシンガポール以外の一定の他国で、同じ商標の出願をしている場合、シンガポールでの出願日を過去6ヵ月以内の他国での出願日に遡ることができるというものです。

 

Q:商標登録にあたって、特に注意点があれば教えてください。

日本人がしばしば陥る失敗に、審査の際に英訳が「記述的」(一般的な商品・サービスの特性であり他との識別力を認めることはできない)と見なされるケースがあります。
「地獄ラーメン」を例にあげると、「Hell ramen noodle」なら記述的とは見なされませんが、出願者が地獄のように辛いラーメンという名前の由来を盛り込んで「Hot ramen noodle」として出願した場合、単にラーメンの特性を説明しただけと見なされ、商標として認められないのです。このように日本では問題なく商標として認められるものが、英訳した際に記述的となり、商標として認められないというケースが多くみられます(日本でも「記述的商標」の登録は認められていません)。

 

Q:出願から登録までにはどれくらいの期間が必要ですか。

特に問題がなければ最短で3ヵ月前後、一般的には4ヵ月~6ヵ月とされています。異議が出されるなど問題が生じると、1年~1年半ほど期間を要することもあります。

 

Q:出願する前にすでに商標が使われているか確認することはできますか。

IPOSの中の知的財産権の出願等に関するIP2SGのウェブサイトで確認することができます。すでに同じ商標が登録されている場合は、異なる商標登録を検討するか、ロゴなどの場合はデザインを一部変更することで、商標登録の可能性を探ることもあります。

 

Q:一度登録した商標権の存続期間について教えてください。

出願日から起算して10年間になります。その後は10年ごとの更新出願(renewal of registration)が可能です。更新するには存続期間の満了前6ヵ月以内に出願しなければなりませんが、特許などと異なり、商標は更新し続ける限り半永久的に権利を保持することができます。更新出願の手数料はオンライン申請の場合S$380になります。(※左記には代理人に依頼する場合の費用は含まれません。)
なお、存続期間が経過しても、期間満了から1年が経過するまでは商標権保護のための手続き(late renewal of registrationなど)を取ることはできますが、存続期間が過ぎた商標権は権利保護の面が弱く、手数料も高額となるため、経過前に更新出願するほうが安全です。

取材協力=ケルビン・チア・パートナーシップ法律事務所 仲村 諒

このコーナーでは、読者の皆様のお悩み・ご相談を、会計・税制、法律、医学、企業ITシステムのプロフェッショナルが無料にてお答えします。

注:本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。


この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.328(2017年12月1日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP日本で飲食店を経営しており、このたびシンガポールに進出しました。...