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航空サービスの舞台裏

2017年8月25日

飛行機の運賃と空席の仕組み

航空会社にとっての商品は、お客様にご搭乗いただく「座席」であり、移動されるその空間で、その最大の特徴は在庫がきかないことです。搭乗手続きを締め切った時に、座席が全て購入済みでもそうでなくても、定刻に飛行機は飛び立ちます。「座席が余ったので30席は明日に回す」、あるいは「もう2時間待てばあと10席売れるかもしれないので出発時刻を遅らせる」ということはできません。

 

一方、航空機を運航するにはさまざまな事前準備が必要です。運航乗務員・客室乗務員・空港で手続きする係員の手配、航空機の整備や部品の交換、関係当局や空港への手続き、機内の清掃、燃料の調達、食事や飲物の準備と搭載、毛布や枕のクリーニングなどなど、お客様の人数に関わらず飛行機を運航するために不可欠な準備があり、もちろんこれには費用が伴います。この費用と収入が適切にバランスしなくては、ビジネスは成り立ちません。民間航空会社は各社、そのための創意工夫を行っています。今回は、これらの特徴を踏まえて、営業部門の裏側、「運賃」と「空席」がどのように連動して販売されているかを簡単にご紹介します。

 

航空運賃はいくつかの要素の組み合わせで決まっていきます。1つ目に、ご利用になるクラスがあります。ANAのシンガポール~東京線の場合、ファーストクラス、ビジネスクラス、プレミアムエコノミー、エコノミークラスがあり、それぞれのクラスによって運賃が異なります。例えばビジネスクラスの最新座席は電動リクライニングシートで、180度フルフラットになってベッドのようにお休みいただけるほか、個人モニターも大型で見やすく、タッチパネルで操作も簡単です。またテーブルも大型でお食事やお仕事にも快適なサイズです。加えてお食事、お飲物、寝具、アメニティなどでもサービスは充実しています。国際線では特に重要な、無料預入手荷物の許容量もクラスによって異なります。

 

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ビジネスクラス座席
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ビジネスクラス機内食

 

2つ目に、運賃ルールがあります。航空券の購入後に予約の変更ができるか、払い戻しができるか、その手数料はいくらか、といった代表的なものから、出発何日前まで購入が可能か、片道利用は可能か、マイルの積算率はいくらか、など、運賃によってルールが異なります。一般的に航空運賃が高いほどルールが緩く柔軟な対応が可能で、条件が厳しいほど安くなります。利用条件が異なる運賃を複数ご用意することで、お客様の多様なニーズに応え、より多くのお客様にご利用いただくことが可能になります。

 

航空会社がお客様からの予約を管理する予約システム内では、全ての運賃が識別されています。例えばエコノミークラスの運賃が3種類ある場合には、それぞれが個別に識別され、同じエコノミークラスの中であっても、それぞれの運賃で実際に予約できる席数は、その便の需要によって変わってきます。例えば、ルールの緩さに応じて、運賃が高い順にA、B、Cという3種類の運賃があるとします。エコノミークラスで200席の販売席数の便があったとして、A、B、Cそれぞれを均等な席数で販売するのか、Cを多めにするのか、逆にAを多めにするのか。これは年間の需要波動、曜日による需要波動、その便の他社競争力など、販売上のさまざまな要素を加味した上で、全体の需要を予測して決められていきます。需要が高く、競争力も高い便であればAの販売席数を多めにするでしょうし、同じ便でも需要が低い時期にはCを多めにすることもあります。

 

国際線の予約・販売は搭乗日の約1年前から開始されますが、予約・販売が開始された後も、お客様の需要次第で状況は変わっていきます。人気のある便で、多くのお客様から予約をいただくと、需要が高くなるにつれて安い運賃の空席は少なくなります。一般的に、旅行の予定が決まったらなるべく早く予約をする方がお得、というのはこのためです。逆に出発が近くなってから航空券を予約すると、購入可能な運賃が比較的高くなっているのです。

 

先述の通り、座席は在庫がきかないため、出発する時点でできる限り空席をなくすように航空会社は努力します。収入は、「搭乗されるお客様の数」と「購入運賃」を掛け合わせたものになりますので、各運賃で販売する座席数のバランスを最適にすることで、1便あたりの収入を最大化させることが営業部門のミッションになります。

 

航空産業は、さまざまな固定費を伴うビジネスです。航空機を筆頭に、空港の設備(搭乗手続きカウンター、ラウンジ、搭乗ゲート、整備格納庫)、飛行機の座席や備品など、常に安全に使用できるようにメンテナンスしておく必要があります。燃油費、機材駐機料、着陸料などの当局へ支払う費用や運航乗務員や客室乗務員の数も、お客様の多寡に関わらず一定で必要になります。これらの費用を上回る収入を適正に確保し、常に安心で快適なフライトをお客様にお届けするための工夫が「運賃」とその運賃に対する「座席数」のバランスの最適化なのです。

 

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.325(2017年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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