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座談会

2017年8月25日

シンガポールの日系飲食店、成功のカギ!

シンガポール人を惹きつける
マーケティングの工夫も大事

AsiaX:売上を伸ばしていくうえでは、適切なマーケティングやプロモーション活動も重要になってくると思います。これらへの取り組みについて教えてください。

 

佐藤:マーケティングや広告の出稿においては、当地の消費者が何を欲しているかを意識しています。近年ではソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が流行っており、シンガポールの人達も「この店でこういうものを食べた」という経験をシェアするようになってきています。グーグルマップにも店へのコメントが掲載されるようになり、いろいろなところで口コミが広がるようになったのが大きな変化ですね。

 

こうした中で強いのはFacebookやInstagram。これらのSNSに、ポジティブな投稿をしてもらえるような仕掛けづくりをしていきたいと思います。例えば今年タンジョンパガーにオープンした「鉄板焼きハンバーグ 日本橋 けいすけ別邸」では、店内に30種類以上の料理が並ぶ6メートルのサラダバーを設置するなどの工夫をしています。

 

AsiaX:最後に、シンガポールにおける飲食業界はこれからどう変化していくのか、ご意見をお聞かせ下さい。また、その中での御社の展開についても伺えますか。

 

山下:シンガポールの飲食業界にはもっと繁栄してほしいと願っています。望ましいのは、どの店でも楽しめるよう、全体のレベルが上がっていくことです。また「飲食業界で働くのはこんなに楽しいのか」と、シンガポールの人達に気づいてもらえるきっかけづくりができればいいなと思います。彼らを魅了するような新しい仕掛けに、できる限り取り組んでいきたいですね。

 

植村:そうですね、サービス業に対して憧れの気持ちを持ってもらえるよう、私たちも努力を続けなければいけません。シンガポールは狭い国で、マーケットがそれほど大きくありません。よって、今後同じようなコンセプトの店は徐々に少なくなっていくのではないかと思います。その中で残っていけるよう、一店舗ずつ丁寧に育てていきたいです。

 

岩崎:シンガポールの現状を理解せずに手を広げることはリスクが大きいと思います。実際、他店の中には、これまで事業規模を拡大していたのを縮小しているところもあります。店舗の賃料がいつ下がるか、経済状況がいつ好転するのかといったことに加え、シンガポールには少子高齢化の問題もあります。今後、飲食業界で働きたいという人は減ってくるのかもしれません。

 

富寿しの場合、お客様は店ではなく人についているところがあります。気に入ったスタッフのいる店舗に行く方が多いようです。よって、今の富寿しのスタイルを続けていくには、日本人スタッフが確保できるかどうかは重要です。その人材も1週間や1ヵ月で育つものではなく、昔の板前のように10~20年でようやく一人前になるような状況なので、人材育成に注力していかねばならないと感じます。

 

佐藤:冒頭でもお話ししましたが、日本食の魅力をローカルの人達に伝えたいと思うプレーヤーが増えることが一番だと思います。私は、日本がものづくり以外で世界に誇れるものは食文化なのではないかと思っています。シンガポールに根を下ろし、これからもしっかりいいものを提供していきたいです。店舗経営の立場から考えると、オペレーションしやすいのでラーメン店を増やしたいところですが、これまでお世話になったシンガポールに対して、何か新しいものを提案していきたいと考えています。

 

AsiaX:みなさん、さまざまな努力をなさっているのですね。日本食に魅力を感じてくれるシンガポール人が増え、さらに日本へ行きたいといったモチベーションにつながれば素晴らしいことだと思います。本日はありがとうございました。

 

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.325(2017年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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