シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP当社は、シンガポールで設立された現地法人ではなく、日本で設立され...

法律相談

2017年7月26日

Q.当社は、シンガポールで設立された現地法人ではなく、日本で設立された会社の支店としてシンガポールで登記されています。最近改正されたシンガポール会社法に関し、外国会社(支店)はどのような対応が必要かを教えてください。

シンガポール会社法改正の外国会社(支店)への影響について ※今回は、前号とは少し違った角度から会社法について解説します

A:2017年3月31日から、外国会社(支店)は、会社の支配権者の名簿および株主名簿を作成し、シンガポール国内で保管することが義務付けられました。

 

Q:会社の支配権者とは、どのような者を指すのでしょうか。

A:その会社に「重要な利害」があるか、または「重要な支配」を及ぼす個人または法人を指します。「重要な利害」とは、会社の株式または議決権の25%超を有することです。また、「重要な支配」とは、(i)取締役会の過半数の議決権を有する取締役の任命権・解任権を有すること(ii)株主決議事項の25%超の議決権を有すること、または(iii)会社に対して重要な影響または支配を及ぼす権利を有することをいいます。

 

Q:支配権者の名簿を作成するにあたり、会社はどのような手続きを行う必要がありますか。

A:会社は、支配権者を特定するため、支配権者と思われる者または支配権者を知っていると思われる者に対して通知を送付し、その回答に基づき名簿を作成します。作成した名簿は、外国会社(支店)またはその登記代理人の登記上の事務所で保管し、シンガポール会計・企業規制庁(ACRA)など当局の要求がある場合、これを開示する必要があります。

 

Q:違反した場合の罰則はありますか。

A:支配権者の特定、名簿の作成・保管、支配権者による回答などはそれぞれ義務とされており、いずれの違反についても、発覚すればS$5,000を超えない範囲の罰金が科せられる可能性がありますので、注意する必要があります。

 

Q:支配権者の名簿の作成・保管が免除される場合はありますか。

A:シンガポール国外で上場している会社で、開示規制の適用があり、法令や証券取引所規則などにより実質的な所有者についての開示義務が課されている場合などは免除されます。

 

Q:日本の本社で株主名簿を保管していますが、そのまま利用すればよいのでしょうか。

A:シンガポールの会社法では、株主名簿に記載すべき事項として、株主の名前・住所、株主名簿への登録日、保有株式の内容、株主でなくなった日(過去7年以内に株主でなくなった者)が挙げられています。そのため、日本の株主名簿に記載がないものがあれば追加する必要があります。また、株主数が50人を超える場合、株主名簿に加えて、検索を容易にするための株主名のインデックスも作成し、株主名簿と同じ場所で保管する必要があります。これらは、シンガポール当局の調査に備えるものであるため、英語で用意する必要があると考えられます。

 

Q:株主名簿をACRAで登記する必要はありますか。

A:ACRAでの登記義務はありません。登記上の事務所などシンガポール国内で保管するとともに、保管場所をACRAに通知します。

 

Q:当社は日本の上場会社で多数の株主がいるため、株主名簿の英訳といった対応が実務上難しいのですが、このような場合、株主名簿の保管義務は免除されるのでしょうか。

A:現時点で特に免除規定はなく、日本の上場会社であっても対応する必要があります。もっとも、多くの会社が対応に苦慮しているところですので、ACRAによるガイドラインや免除規定の整備といった現実的な措置が望まれます。

取材協力=ケルビン・チア・パートナーシップ法律事務所 清水 洋介

このコーナーでは、読者の皆様のお悩み・ご相談を、会計・税制、法律、医学、企業ITシステムのプロフェッショナルが無料にてお答えします。

注:本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。


この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.324(2017年8月1日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP当社は、シンガポールで設立された現地法人ではなく、日本で設立され...