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シンガポールで実践!英語プレゼン

2017年7月26日

経営者に求められているプレゼンとは?

~Whyと未来とストーリーで聞き手をインスパイアせよ~

経営者の英語プレゼンに関して非常に残念に思うことがあります。一つは、他の社員に任せてしまい、自分では全くプレゼンテーションをしない人がいることです。質疑応答のパートはいざしらず、プレゼン自体はなんとか自らの口で語って欲しいと思います。もう一つは、経営者としてふさわしいプレゼンになっていないことです。淡々と自社の会社概要を説明し、そのまま商品の説明……まるで商品の担当者がするような説明に終始しており、「なんともったいない!」と感じさせるプレゼンになっているのです。では、そもそも経営者がプレゼンをする目的は何なのでしょうか?

 

一言で言うと、思いやビジョンを語り、聴き手をインスパイアすること。聞き手が取引先なら「この会社と付き合いたい」「ぜひ応援したい」と思わせることが経営者のプレゼンに求められているのです。そのために何を語るべきなのか?Whyと未来とストーリーを語るのです。

 

まずはWhy。一番重要なのは「なぜこの事業をやっているのか?」ということ。コンサルタントのサイモン・シネック氏によると、繫栄する企業と衰退する企業の差は「経営者がWhyを語っているかどうか?」だと言います。顧客は究極的にはその企業のWhyを買っているのだと。好例の一つはFacebookです。経営者のマーク・ザッカーバーグ氏は「人々にコミュニティを構築する力を与え、世界の絆を強める」ために事業をしていると明確に語っています。しかしながら、ここまで明確に言語化できていない人もいるかもしれません。その場合に一番良いのは、自分の原点に立ち戻ることです。「なぜ自分はこの事業を始めたのか?」「社会や顧客のどんな問題、課題を解決したいからこの事業をしているのか?」を自分に問うてみてください。必ずあなたならではのWhyが見つかるはずです。

 

二つ目は未来です。故スティーブ・ジョブズ氏は「製品を売るな、夢を売れ」と表現しました。言い換えれば、「製品を語るな、夢を語れ」ということです。あなたが語るべきは製品のスペックではありません。「あなたの事業を通じて将来的にどんな素晴らしい世界が実現するのか?」。いわば未来の世界観を表現すべきなのです。そういう点で孫正義氏の30年ビジョンプレゼンは参考になります。まさに言葉通り、ソフトバンクの事業が30年後の世界をどう変えているかをありありと語っています。実際そこまで壮大なものでなくて構いません。あなたなりの実現したい夢を語ればいい。その未来語りこそ、聞き手をワクワクさせ「この人と一緒に仕事がしたい!」と思わせるのです。

 

三つ目はストーリーです。心を動かし、印象に強く残るプレゼンには必ずストーリーがあります。では何をストーリーとして語ればいいのか?上記のWhyと未来です。さきほどご紹介したザッカーバーグ氏が2017年5月25日に母校のハーバード大学で行った卒業式スピーチが好例です。氏はスピーチの中で「なぜFacebookを始めようと思い、どうやってそこに行きついたのか?」「事業経営の中でどんな危機が訪れ、どう乗り越えていったのか?」といったストーリーをうまく語っているのです。それによって、俄然リアルで熱が伝わる魅力的なプレゼンになっています。まさに経営者が語るべきプレゼンの模範と言っていいでしょう。

 

Why未来ストーリー。この「ニュー三種の神器」があなたのプレゼンに魂を吹き込み、聞き手をインスパイアしてくれるでしょう。

 

本コラムの著者西野氏からのメッセージビデオはこちらから。

 

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プロフィール
320web_Nishinosan_130623_1西野 浩輝 マーキュリッチ株式会社 代表取締役 Chief trainer

米テンプル大 Executive MBA(経営学修士)、大阪大学大学院 工学科専攻修了。リクルート在籍中に部門初のMVPに2度輝くなど、トップ営業として活躍。その後、世界最大の教育コンサルティング企業アメリカン・マネジメント・アソシエーションにヘッドハンティングされ、4年半トップ営業であり続けた。2003年にプレゼンテーション専門のコンサルティングを行うマーキュリッチを創業し、10数年に渡って5万人近いビジネスパーソンを指導。一部上場企業の経営者から新人まで対象層は幅広く、顧客数は300社を超える。「プレゼン力はフィードバック力」のコンセプトのもと、受講者の分析力・フィードバック眼を鍛えることを通じて、短期のトレーニングで成果を実現する。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.324(2017年8月1日発行)」に掲載されたものです。

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