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座談会

2017年7月26日

シンガポールでの人事考課制度のあり方とは?

年功序列型で人員の入れ替わりが少ない
組織の改革について

 

AsiaX:シンガポールの日系企業に多くみられる問題点について、どのようなものがありますか。また人事考課の面から、どのような改善が図れるのでしょうか。

 

田尾:日系企業の中には、離職者が全くいないことがむしろ問題になっているところがあります。20~30年選手ばかりで世代交代がない。なぜなら、その企業には年功序列や終身雇用の仕組みが残っており、在籍しているだけで給料が上がる仕組みになっているからです。いわゆる「お局様」のような人がいる企業もあり、その状況を見て若い社員は「上が詰まっていて、先がない」と感じて離職してしまうのです。
こうした状況を改善するにはどうすればいいかと、企業から相談されることも多く、われわれはまず定期昇給をやめるようアドバイスしています。問題なのは、ただ長く勤めてくれる人を望むような処遇の仕組みがあることで、まずはそこにメスを入れていく必要があります。

 

平松:当行でも、長年勤務しても業績が上がらない一方、給料やボーナスが年々上がっている人が見受けられました。人件費の高騰に歯止めがかからず、こうした事態を解消することが経営の喫緊の課題でもありました。特に、役職が上の人に対して「重要な役割を担っているため退職されては困る」という後ろ向きな理由で厚遇している現場上司も散見されました。
そこで今年は、5段階評価の各レーティングの人数をあらかじめ定められた分布で決めることを徹底するような工夫を行いました。
実質的な相対評価を導入したことにより、これまで厚遇だった人が評価も報酬も下方修正を余儀なくされる一方、真に業績に貢献した人がこれまで以上に高い処遇を受けるなど、大きなメリハリがつく結果となりました。
ここで何よりも重要なことが、スタッフ本人に対する「フィードバック面談」です。面談では「なぜこんなに去年と比べて評価や報酬が下がるのか」ということが徹底的に議論されます。これまで長年勤務している人に対して、「頑張ってくれ」としか言ってこなかった上司は、期待要件との差について具体例を持って説明せざる得ない状況に追い込まれたわけです。自身への評価は「不当だ」と、受け入れられず退職した人もいますが「初めて上司が求めていることが明確に分かりました」と納得し、スタッフ本人の意識改革への転機となったケースもあります。

 

嘉藤:当社のシンガポール拠点は40~50人規模ですが、狭い職場で相対評価を導入するとどうしても不公平が生まれると個人的には考えています。当社は絶対評価を徹底する方針で、弊害が出ればその都度、変えていけば良いと思っています。
年功序列による昇給は当社でも行っていません。永年勤続者については商品券などのインセンティブを用意していますが、定期的に昇給するシステムにしてしまうと、競争の厳しいシンガポールのマーケットでは戦えません。そこは明確に区別する必要があります。逆に、若手社員であったとしても公平に評価することを心がけています。中には入社から1年で給料が2倍近くまで上がった人もいます。

 

AsiaX:健全な新陳代謝のある組織づくりを目指すうえでは、採用時にその企業の評価基準を、候補者にある程度示しておくことも大切になるのではないでしょうか。

 

田尾:はい。面接の際に自社の評価項目を候補者に見せることは、ミスマッチを防ぐうえで効果的といえます。例えば、社員に遅刻してほしくないなら、評価項目に遅刻の回数を入れれば良いですし、それが嫌という社員はその企業には合わない可能性があるということです。さらに、現在その企業で活躍している人の特徴を定義し、面接で候補者がそれに合致しているかを問うような質問をする、といったやり方も有効です。

 

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