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座談会

2017年6月23日

シンガポール個人所得税の注意点とは?

古川:日本でも事業を行っていて収入がある場合、その所得は日本で申告するのでしょうか、それともシンガポールで申告するのでしょうか。

 

斯波:その収入が日本で申告すべき所得かどうかは、まず日本で税務上の居住者であるか非居住者であるか、次にその収入が日本の国内源泉所得に該当するかどうか、また日本に事務所などの恒久的施設があるかどうかなどによって異なります。その収入が日本で申告すべき所得にあたらない場合、所得の源泉地は恐らくシンガポールにあり、シンガポールで申告すべきだと思われます。その一方で、場合によっては、日本とシンガポールの両方でそれぞれ課税される二重課税になってしまう事例もあります。その場合、日本とシンガポールの間には租税条約がありますので、外国税額控除などにより二重に支払う税金の金額を少なくすることができます。

 

AsiaX:シンガポールでは、居住者と非居住者で課税に違いがありますか。

 

斯波:非居住者には所得控除が適用されず、給与所得については一律15%の税率で課税されます。居住者には累進税率が適用され、課税所得のうち最初の20,000Sドルまでは税率0%、つまり税金がかかりません。また各種の所得控除も適用されるので、居住者の方が一般的に有利です。

 

AsiaX:シンガポールと日本のどちらの方が住みやすいか、話題になることもありますが、やはり税金のことを考えるとシンガポールに住んだほうが得なのでしょうか。

 

斯波:そうですね。シンガポールは、居住者の場合、日本と比べて税率も低いので、日本とシンガポールの両方で事業を行っているような人は、シンガポールに本拠地を移した方が税務上は有利でしょうが、実際にはなかなかそう簡単に移住するという訳にはいかないようですね。

 

所得控除の対象は?

 

斯波:シンガポールで節税を心がけるには、控除についてもよく知っておくとよいでしょう。例えば、シンガポールでは職業に関連するセミナーや講習を受けたり、働きながら学位や資格の取得を目指して勉強し、そのための授業料や試験料を自分で負担したりした場合、年間5,500Sドルまで控除の対象になります。申請する場合には、領収書などの証拠を失くさないように取っておきましょう。また、シンガポールで認可されている保険会社で本人または配偶者を被保険者とする生命保険を契約している場合、支払った保険料のうち年間5,000Sドル(CPF控除と合わせて)まで控除することができます。

 

齋藤:寄付すると控除が受けられると聞いたのですが、寄付した金額に対してどれくらいが控除されるのでしょうか。また日本に寄付した場合も控除の対象になるのでしょうか。

 

斯波:シンガポールでは、寄付した金額の2.5倍が所得から控除されます。ただし控除の対象となる寄付の相手先は、シンガポールの公共機関(IPC: Institution of a Public Character)として認可されている慈善団体かシンガポール政府に限られます。寄付金控除は、シンガポール国民にとって利益となる寄付行為を奨励するためのものなので、海外の災害支援などの目的でシンガポールのIPCを通じて寄付した金額は、残念ながら控除の対象にはなりません。

 

AsiaX:他にはどのような控除があるのでしょうか。

 

斯波:居住者のうち、給与所得か事業所得か年金所得がある人は、55歳未満であれば1,000Sドル、55歳から59歳は6,000Sドル、60歳以上は8,000Sドルの勤労所得控除が受けられます。また、日本と同じように、家族を扶養し、その家族の年間所得が4,000Sドル以下であれば、配偶者控除として2,000Sドル、子どもの扶養控除として1人につき4,000Sドルが認められています。

 

AsiaX:シンガポール人だけでなく、外国人にも適用される控除もいろいろあるのですね。読者の皆さんの多くは、これらを活用することで節約につながると思います。それでは最後に、斯波さんから読者の皆さんへメッセージをお願いします。

 

斯波:シンガポールでは、自分で所得税の申告や支払いをする必要があるので、こういった手続きを経験することで、自分が支払う税金やその使われ方について考えるよい機会になると思います。また、申告する際に年収なども確認できますので、3年後にはこれくらい稼げるようになろう、など自身のキャリアをお金の面から考えてみるのも良いかもしれません。

 

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.323(2017年7月1日発行)」に掲載されたものです。

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