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2017年4月25日

シンガポールにおけるスポーツブランド勝敗の法則

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元プロ野球選手の原辰徳氏の講演が、4月23日にシンガポールで開催された。またナショナルスタジアムでは、ラグビーの国際リーグ戦であるスーパーラグビーの試合のほか、7人制ラグビーの大会であるシンガポールセブンズが行われるなど、スポーツ関連のイベントが盛り上がりを見せている。シンガポールで一番人気のあるスポーツはマラソンと言われる中、各スポーツブランドは関連製品の市場シェアを拡大すべく、独自の事業展開を図っている。本稿では、主なスポーツブランドの動向を紹介しながら、シンガポールで成功するための要因を考察していきたい。

 

ナイキとアディダスが市場の3分の1を占有
非寡占型の市場は後発ブランドにも好機

図1でシンガポールと米国、日本、中国におけるスポーツウェアの市場規模と、上位ブランドの市場シェアを比較した。シンガポールの市場規模は7億6,300万Sドル(約611億円)と日本の約25分の1にとどまるが、その人口規模やスポーツ後進国と揶揄される消費環境を踏まえると驚くべき数字ではない。

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またシンガポールでは中国と並び、米ナイキと独アディダスが市場の3分の1のシェアを占めており、米国や日本に比べて2大ブランドが占める割合が高い点が特徴である。しかしながら、その他の上位ブランドが占める割合は4ヵ国の中では最低の13.1%にとどまり、ナイキとアディダスに続くブランドの存在感が低いことが読み取れる。この点は、見方を変えれば後発のスポーツブランドが市場を拡大するチャンスを暗示しており、シンガポール独特の市場環境と多様な消費者の嗜好を十分に理解したうえで、事業展開を進めていく重要性を示唆している。

 

「ハブ国家」の市場特性を活かした出店を
スクーリング選手のスポンサー争奪戦に注目

市場シェアの拡大には店舗の数とロケーション、すなわち出店戦略が重要であることは言わずもがなであるが、シンガポールの「ハブ国家」の特性を活かして出店しているのがナイキとアディダスである。ナイキは11店舗を展開しているが、アウトレットの3店舗を除いた8店舗の内、実に6店舗はオーチャード通りを中心とする市街地に出店している。またアディダスは量販店を含めて約150店舗を島内各地に出店しているが、注目すべきはチャンギ国際空港の全3ターミナルに出店している点である。海外から年間約1,600万人が訪問するシンガポールにおいて、その多数が通過するエリアに集中して出店する2大ブランドの戦略は、インバウンド需要を取り込むことで人口550万人の小規模市場のデメリットを補う施策として参考になる。また両ブランドともに既にオンライン店舗を展開しており、確実に加速する実店舗からオンライン店舗へのシフトに対する備えも整っている。

 

さて原辰徳氏が巨人軍に在籍していた1981年から2015年にわたり、チームのユニフォームは老舗ブランドのデサント、アディダス、そしてアンダーアーマー(以下UA)の3社がスポンサーとして提供していた。アディダス以降のユニフォームにはブランドのロゴが入っており、後発であるが故に認知度も劣るUAに関しては、選手が着用している姿を見てブランドを認知するに至った消費者も相当数いたとみている。これらのスポンサーシップは、自社ブランドが狙いを定める潜在顧客に好感的に認知され、来店を促したうえで商品を購入してもらい、最終的にはロイヤルユーザーになってもらう過程で重要な役割を担っており、ブランドマーケティングの一環としてシンガポールでも各スポーツブランドが積極的に展開している。

 

マラソン以外にシンガポールで人気があるスポーツと言えばサッカー、バトミントン、そして卓球が挙げられるが、サッカーのシンガポール代表チームにはナイキが、バトミントンの代表チームには中国最大手のLi-Ning(リー・ニン)が、そして卓球の代表チームにはアシックスがこれまでに用具を提供している。また日本のヨネックスは過去40年以上にわたってシンガポールのオリンピック委員会のスポンサーを務めており、2020年の東京五輪までは代表選手団のウェアを提供することが決まっている。

 

様々なスポンサーシップの中でも特筆したいのが、アジア最大の総合格闘技団体ONE Championship(ワン・チャンピオンシップ、以下ONE)に対するUAのスポンサーである。2011年に日本人とタイ人の親を持つ起業家によって設立されたONEは、昨年には政府系投資会社から出資も受け入れ、シンガポールを拠点に拡大路線を突き進んでいる。一方で、2014年にシンガポールに進出してから着実に成長を遂げ、4月にはオーチャード通りに旗艦店を開店したUAは、東南アジアの4ヵ国で昨年開催されたONEのイベントスポンサーを務めたことで、新興市場の潜在顧客に対して大きなアピールができたとみている。

 

さらに興味深いのは、昨夏のリオ五輪でシンガポール史上初の金メダルを獲得した競泳男子のスクーリング選手が、5月にシンガポールで開催されるONEの大会にセコンドとして参戦する点である。現在米国の大学に在籍する同選手は、NCAA(全米大学体育協会)の規定によりスポンサーからの資金提供を禁じられているが、卒業後は数億円単位の争奪戦が予想される人気アスリートの登用は、ONEを通じて将来の広告塔に接近を図るUAの「青田買い的」な思惑とみえなくもない。

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