シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP1月からEPの発行厳格化、どうなる?シンガポールの日系企業

座談会

2017年3月30日

1月からEPの発行厳格化、どうなる?シンガポールの日系企業

カテゴリー:人事

日系企業のグローバル化につながる動き
新基準の適用は変革のチャンスに?

 

AsiaX:企業と働き手、そして人材紹介会社それぞれが変わっていかなければならないということですね。最後にコメントをお願いします。

 

永見:現在シンガポールで働いている方は、まず今の勤務先で自分の価値をしっかり高めていくことが大切だと思います。企業側は、これまで以上にしっかりした人事計画を策定することが求められています。新しく人を採用したために、コストの問題で既存スタッフのビザが更新できなくなったり、既存スタッフ(特にビザが不必要なシンガポール人、PR保有者など)が新人との給与差に不公平感を感じ、その職場を去ってしまったりしては本末転倒です。

 

小林:今後の企業側のニーズについては「やる気のある20代の若手および高学歴バイリンガル人材」および「30代以降のマネジメント・専門職」の二極化が進むことが考えられます。
こうした中、被雇用者の方は「マーケットの中で自分の強みは何なのか?」「自分は今の会社にどう貢献できているのか?」「シンガポールで自分は今後どのようなキャリアを築けるのか?」といった点について考えることが大事です。自分が勤務先にとって「やめて欲しくない人材になっているのか?」と自問自答しながら、サバイブしていく必要があると思います。

 

北川:EPの取得は難しくなりますが、一方で日本人でなければできない仕事が多くあることも事実です。シンガポールで働く日本人の方は、ビザが取れず働けなくなるのではないかと不安に思う必要はそれほどないのではないかと考えます。
また新基準の適用は、日系企業のグローバル化につながる動きであり、シンガポール人から選ばれる企業になるにはどうすればいいかという視点からすれば、中長期的にはポジティブな影響を与えてくれるのではないでしょうか。シンガポール人をマネジメント層に登用する日系企業が増えることも予想され、数年後にはシンガポール人にとって働きやすい日系企業が増える可能性が高いのではないかと思います。
日系企業は外圧がなければなかなか変われないところがあり、今回の新基準の適用は変革のチャンスとも捉えられます。

 

下垣内:優秀な人材をどうやって採用し、確保するのか、例えば、ジョブローテーションによる人材育成などを含め、それぞれの国の文化・風習にあったやり方を見つめ直す必要が出てきています。日系企業はこうした変化を受け入れながら、今まで以上に、シンガポールの経済に貢献できるよう、成長しなければならないと感じています。
これまで日系企業は、長期安定雇用およびキーマンの自社育成を強みと考えてきました。しかし今回のEP発行基準の見直しにより、採用時の処遇の水準が高まれば、これまでの考え方を変えなければ競争力を維持できないという懸念も出てきます。採用時に、候補者の能力や経験をシビアに評価し、給与・福利厚生の条件について交渉する力も企業側には求められるでしょう。

 

丸茂:こうした動きを見ていると、シンガポールの日本企業における雇用のあり方は、今後海外の水準に合わせていかざるを得なくなると感じます。
私がシンガポールに来た20数年前、日本人の給与水準はシンガポール人の2倍くらいありました。それから日系企業はどんどん価値を落としていて、今は平均収入もシンガポールの平均を下回っています。今回のような変化をかんがみながら日系企業が凋落するのを食い止め、これからどう変わっていくのか、興味深く見ていきたいと思います。

 

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.320(2017年4月1日発行)」に掲載されたものです。

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