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法律相談

2017年1月23日

Q.当社は、シンガポール現地法人を通じて、シンガポールの会社の買収(M&A)を検討しています。買収手続のプロセスや方法の概要について教えてください。

シンガポールにおける企業買収(M&A)について

A:買収手続の流れは、基本的に日本と大きく異なるわけではありません。また、買収の方法として、事案次第であるものの、株式譲渡が多く用いられている点も日本と似ています。

 

一般的なプロセスとしては、秘密保持契約書を締結し、対象会社から検討に必要な情報の提供を受け、買収価格、従業員の処遇、その他の重要な条件について協議を行います。ある程度条件について合意がなされると、通常、レターオブインテント(LetterofIntent)と呼ばれる基本合意書を締結します。

 

その後、会計事務所や法律事務所などが、対象会社の財務状況や法務リスクについて調査・査定を行うデューディリジェンス(Due Diligence)を行います。そして、これにより明らかになった対象会社の問題点や評価額に基づき、最終契約の締結に向けて契約交渉を行います。最終契約の締結後は、最終契約で定められる売主の義務の履行(例えば、取引先の同意の取得やオーナーの個人財産の売却)等を経て、代金支払いや株式譲渡などのクロージング手続が行われます。

 

なお、対象会社の業種や規模等によっては外資規制や各種業法、企業結合規制等が問題になることもあります。

 

Q:シンガポールの会社を買収するにあたっては、どのような方法を取るべきでしょうか。対象会社は非上場のオーナー会社で、不動産や大きな設備は特に保有していないとのことです。

A:小規模な会社を対象とするM&Aの場合、株式譲渡または事業譲渡が一般的です。株式譲渡は対象会社の株式を保有している株主から株式を譲り受ける方法です。一方、事業譲渡はある会社の事業を他社から譲り受ける手続です。事業譲渡の場合、事業とともに承継する資産・負債や権利・義務を選択することができますが、これらの承継手続を個別に行う必要があります。また、シンガポールで設立された会社同士が当事者となる場合、2つ以上の会社が1つとなる合併も考えられます。今回のケースでは、貴社の意向や具体的な状況次第ですが、株式譲渡の方法によることが多いと思われます。

 

Q:上記と異なり、シンガポール証券取引所に上場している会社を買収対象とする場合、取るべき方法は変わってくるのでしょうか。

A:対象会社がシンガポール証券取引所に上場している場合、シンガポール買収・合併規約(Singapore Code on Take-overs and Mergers)が適用されます。この場合、対象会社の株式取得にあたり、一定の場合には公開買付けが強制されるなど、より複雑な手続が必要となることがあります。また、スキーム・オブ・アレンジメント(Scheme of Arrangement)という方法が取られることもあります。これは、シンガポール会社法に基づく資本・組織再編の手法で、特定のスキームが決められているわけではなく、対象会社が提出する再編案についてその株主総会による同意と裁判所による承認を得ることにより行われます。全株主の同意を必要とするものではありませんので、少数の株主がM&Aに反対している場合に用いられることがあります。

取材協力=ケルビン・チア・パートナーシップ法律事務所 清水 洋介

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注:本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。


この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.317(2017年1月23日発行)」に掲載されたものです。

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