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ビジネス特集

2017年1月1日

2017年マレーシア経済の現状と展望

三菱東京UFJ銀行 経済調査室 シンガポール駐在 シニアエコノミスト 中村逸人

2016年のマレーシア経済は、資源安が資源関連業種の業況悪化や支出抑制をもたらした一方、国内では2015年4月に導入されたGSTによる物価上昇の剥落に伴い家計消費が拡大するなど、部門や業種によって景況感の差が顕著になった。経済全体の成長率を見ると、マレーシアの2016年1~9月期の実質GDP成長率は前年比4.2%増と2015年の5.0%増から低下した。

 

成長率低下の主因は海外経済の緩やかな成長や資源関連需要の停滞を受けた輸出の伸び悩み、公共投資・民間企業の設備投資の抑制である。シンガポールの記事でも触れたが、マレーシアも対外開放度の広い経済構造を持つが、更に資源部門への依存度が大きいことも特徴だ。輸出低迷や資源安による輸出・資源系企業の収益環境の悪化が投資等の支出サイドの抑制をもたらしている。国営石油大手であるペトロナスの売上高は4~6月期、7~9月期ともに前年から約2割落ち込んでいるが、収益確保に向けて人件費や設備投資の大幅削減に着手している。マクロレベルでも、失業率はそれほど高水準ではないとは言え、3%台半ばまで上昇しており、企業の労働コスト抑制姿勢が窺える。

 

他方、こうした中でも家計の支出は緩やかな伸びの加速を続けている。四半期毎の実質個人消費の前年比増減率を見ると、GST導入直後の2015年7~9月期に4.1%増まで鈍化したのち、2016年1~3月期には5%成長へと回復し、以降は4~6月期に6.3%増、7~9月期も6.4%増と高めの成長を続けている。確かに、象徴的な耐久消費財である自動車販売は、家計債務残高の積み上がりを懸念した銀行のローン承認率の低下やリンギット安を受けた完成車・部材輸入コストの高まりによる自動車小売価格の上昇を背景として、直近10月も二桁減が続いている。一方、全体として見ればインフレ率が低水準に止まる中で、家計の実質購買力が底上げされ、サービス関連消費を中心に、国内の消費市場の底堅い拡大をもたらしている。

 

2017年の景気を展望すると、資源安の長期化が資源部門のコスト削減等を通じて、引き続き実体経済の重石となるだろう。一方、家計部門は、物価安定やサービス関連業種では底堅く推移する雇用環境が支えとなる形で消費の拡大を続ける見込みである。懸案の輸出であるが、引き続き海外経済の高成長は見込めないながらも、従来からマレーシアの輸出は為替相場の変化に比較的大きく左右される傾向を持ち、足元にかけて一層進んでいるリンギット安が輸出の支えとなるとみられる。

 

こうした点を踏まえれば、2017年の実質GDP成長率は前年比4.5%増と2015年(見込み)の4.2%増から小幅ながら高まっていくと予想される。他方、11月に突如公表された外国為替管理の新制度が足元で企業の事業環境に大きな混乱をもたらしていることも踏まえれば、マクロ経済情勢だけではなく、規制の動向にも細心の注意を払っていく必要があるだろう。

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.316(2017年1月1日発行)」に掲載されたものです。

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