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ビジネス特集

2017年1月1日

2017年シンガポール経済の現状と展望

三菱東京UFJ銀行 経済調査室 シンガポール駐在 シニアエコノミスト 中村逸人

2016年のシンガポール経済は厳しい局面が続いた。2016年1~9月期の実質GDP成長率は前年比1.7%増と前年の2.0%増から低下したが、四半期毎でみると、1~3月期と4~6月期の2.0%増が7~9月期には1.1%増へ低下し、足元にかけて景気の軟調さが増している。

 

シンガポールは輸出がGDPの170%を超え、外需依存度が極めて高い経済構造を持つ。このため、国内の景気動向も含めて、外部環境=海外経済に左右されるところが非常に大きい。この点、海外経済を確認すると、日米欧等の先進国ではグローバル金融危機後の循環的持ち直しが続いたが、成長ペースは過去を下回り、世界経済全体も「慢性的な成長力不足」と称される低成長下にある。また、シンガポールにとって最大の貿易相手国となった中国は、重工業を中心に積み上がった過剰設備の調整を主因に、経済成長のペースを着実に切り下げている。こうした状況の下、グローバル貿易は著しく伸び悩んでいるが、シンガポールの輸出も2016年1~11月期に前年比5.6%減と、2015年の7.2%減に続いて、2年連続の前年割れがほぼ確実な状況にある。

 

海外経済の成長鈍化・貿易の伸び悩みに加え、シンガポール経済にとってもう一つの逆風が、長期化する資源安だ。シンガポールは資源の純輸入国であるため、資源安は経済にプラスの影響が大きいと筆者は考えてきた。確かに、低価格で輸入した資源は財やサービスの価格を押し下げ、家計の購買力を高めるほか、輸入減により貿易収支の改善要因となる。

 

だが一方で、資源開発業者の生産設備投資が減少した結果、石油採掘リグ等を生産する海洋・オフショアエンジニアリングの業況が悪化している。同業種の生産量は2014年頃のピークから半減したが、この間の実質GDP成長率に対する貢献度合いは0.6%ポイント低下した。足元の成長ペースが1%程度であることを踏まえれば、この影響は決して小さくはない。

 

国内に目を転じると、小売売上高は緩やかな増加を続けるも、車両購入権の期限切れ到来による買い替え需要が顕在化している自動車販売を除けば、3.6%減で3年連続の減少となり、家計の需要も強いとは言えない。住宅市場でも、民間住宅価格は2016年7~9月期に前期比1.5%減と減少基調が持続、空室率も4~6月期に8.9%と、16年ぶりの水準まで高まっている。

 

内憂外患の状況の中、当面のシンガポール経済は厳しめの局面が続くと予想される。力強さを欠く海外経済、貿易伸び悩みが外需依存度の高い同国経済の重石となり続けるためだ。実質GDP成長率は2016年の1.5%増に続き、2017年も2.1%増と低水準に止まることが予想される。このように、2017年も短期的には逆風の強い状況に置かれる見通しだが、将来の持続的成長に向けて、官民を通じた構造改革を持続していけるか、注目の一年となるだろう。

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.316(2017年1月1日発行)」に掲載されたものです。

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