シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP2017年シンガポールの流通・消費トレンドを大予想!

シンガポール星層解明

2017年1月1日

2017年シンガポールの流通・消費トレンドを大予想!

外食はミシュランガイドで多角化が加速
フードデリバリーは優勝劣敗が鮮明に

ともすると「国民総美食評論家」のシンガポールにおいて、東南アジア初のミシュランガイドが登場したのは意外にも2016年のことであったが、例に漏れず物議を醸す結果になった「格付け」のブランド力と影響力は、シンガポールでは独特の形で作用していくとみている。その背景には島内に100ヵ所以上も存在するシンガポールの台所「ホーカー(屋台街)」の存在が大きいのだが、2016年はこのホーカーに店を構える2店が1つ星を獲得し話題となった。その1店である「香港油鶏飯麺」は、1つ星を獲得してからわずか3ヵ月後には80席の着席型レストランを出店する計画のみならず、将来的には海外にも出店していく意向を発表している。

 

注目したいのは、インキュベーターとしてこのホーカーの事業拡大を支援する外食企業のHersing Culinary(HC)の存在である。HCは同じくミシュランガイドの香港版で1つ星を獲得したTim Ho WanやKam’s Roastに加え、日本版でラーメン店として世界初の1つ星に輝いた蔦をシンガポールで展開するなど、ミシュラン1つ星の縦横の事業拡大を積極的に支援しており、シンガポール版の発刊を背景にこの多角化の流れは加速していくとみている。

 

外食以外にも飲食業界で注目したいのがフードデリバリー、すなわちレストランやホーカーなどの飲食店からの出前サービスである。サービス自体は新しくないものの、近年のスマートフォンやシェアリングエコノミー(遊休資産を活用したビジネス)の普及を背景に、外資系のDeliveroo、foodpanda、UberEATSに加えて少なくとも8社の地場企業が市場のパイを奪い合っている。しかし消費者の胃袋と財布から継続的に支持されるためには、提携する飲食店の多寡に加えて配送料金、配送可能エリアや配送時間といった物流能力の優劣が重要であることは言わずもがなであり、持続可能な優位性を構築できない企業は価格競争にさらされ、体力の弱い事業者は早晩撤退するか合従連衡の渦に巻き込まれる1年になるとみている。

 

統合型リゾート(IR)とF1は節目の1年に
ホテルは新設と改装で競争が一段と加熱

2016年上半期に日本を訪問した外国人が1,171万人だったのに対し、東京23区とほぼ同じ面積のシンガポールを同期間に訪問した外国人は、同国の人口560万人をも上回る820万人に及んでいる。国を挙げて観光振興施策に取り組んでいる賜物であるが、2017年はそのホスピタリティ産業を象徴する2大アトラクションにとって節目の年となる。

 

1つ目は開発がスタートした2007年に政府から付与された10年間の複占(2社による独占)許可の有効期限が2017年中に満期を迎えるマリーナベイサンズ(MBS)とリゾートワールドセントーサ(RWS)の統合型リゾート(IR)の両施設である。満期後も新たなIRが開発される計画を耳にすることはないが、国境を越え加速する集客競争に勝ち残るためには施設への継続的投資が必要となる。

 

2つ目は2008年に初開催されてから10年目を迎えるF1シンガポールGPである。シンガポールでの開催契約は2017年までとなっており、2018年以降の開催についてはまだ確定していない状況の中、2017年9月のレース開催時期に向けてF1オーナー企業との駆け引きが加速することが予想される。

 

また2005年から2015年までの10年間に、室料収入の合計が12億Sドル(約970億円)から32億Sドル(約2,590億円)と約2.7倍もの成長を記録したホテル業界であるが、客室数の増加と客室単価の上昇は2017年も継続すると予測される。国を代表するラッフルズホテルは2017年から2018年にかけて約25年振りに、MBSは2016年から2017年にかけて2010年の開業以来初となる大規模な改修を実施することに加えて、2016年末から2017年にかけてはJWマリオット、ソフィテル、アンダーズなどの高級ホテルの新規開業が予定されており、国内外からの宿泊客の争奪戦は激化の一途をたどることが予想される。

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