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来星記念インタビュー

2016年12月5日

リオデジャネイロ2016パラリンピック 金メダリスト イップ・ピンシウ選手

―アスリート生活で大変なことは何ですか?

大変なことと言えば、皆さんと同じく朝早く起きるのが辛いことでしょうか(笑)。練習がある期間は5時半に起床しています。自分がすぐに起きられないことを知っているので、目覚まし時計のスヌーズモードは欠かせません。6時半にはプールサイドに行きウォーミングアップなど準備を整えます。7時から練習がスタートし、夜9時までずっと続きます。シャワーを浴びて家に帰るのは22時過ぎになりますね。プールのあとにジムで食事を摂ると23時を過ぎることもあります。
大変なときもありますが、いつも「これをすることが、最終的に自分の望む結果につながる」と自分に言い聞かせています。例えば、正しく食事を摂っていれば、自分の身体のコンディションを良く保つことができ、結果として早く泳ぐことができます。全ての物事についても同じだと思っています。

 

―シンガポールの練習環境についてはいかがでしょうか。

とても満足しています。普段練習しているシンガポールスポーツハブは新しい施設で設備も整っていますし、屋内プールのため天候を気にする必要もありません。やはり日々のことですから、恵まれた環境のなかでストレスなく練習できることはありがたいことだと思っています。

 

―障がい者スポーツの認知度を高めるイベントなどにも積極的に参加されていますが、どういったお考えがあるのでしょうか。

ひと昔前までのシンガポールでは、パラスポーツに対する認知度は非常に低いものだったと思います。それが、北京パラリンピックでシンガポール代表選手が金メダルを獲得し始めてから、年々、認知度は向上してきました。そして昨年の12月にASEANパラゲームズがシンガポールで行われたことは、さらに注目を集めるきっかけになったと思っています。私がこういったイベントに参加するのは、パラスポーツの認知度を向上させるというのはもちろんですが、障がいを持った方々に「目標を定めてそれに向かい一生懸命努力すれば、たとえ障がいがあったとしてもいつか達成できる」ということを伝えたい、という気持ちが大きいですね。

 

―少しプライベートについて聞かせてください。お休みの日は何をされているのでしょうか?

現在は日曜日が休みなのですが、ほぼ寝て過ごしていることが多いです(笑)。それ以外で言うと、平日は練習ばかりで家族との時間をとれないので、できる限り家族と過ごすことを心がけています。5ヵ月になる甥っ子がいるのですが、一緒に遊ぶことでストレスが解消され、癒されています。
現在、シンガポールマネージメント大学(SMU)に通っていて、1月から5月までは大学に通学し、6月から12月までは水泳のトレーニングに専念するというスケジュールで動いています。シーズンオフの時期は普段に比べて時間ができるので、友達とカフェに行ってお喋りをしたりご飯を食べたりもします。その点は普通の大学生と変わりはないと思いますね。

 

―日本に関してはいかがでしょうか。今までに行ったことのある場所や好きな食べ物はありますか?

2007年に行われたジャパン・オープンの試合に出場するため、1度だけ大阪に行ったことがあります。短い滞在ではありましたが、試合後の空き時間を利用して市内観光をしたことが印象に残っています。道頓堀に行って、お店を見て回ったりご飯を食べたりしましたね。また行きたいと思っていますが、なかなか時間が取れずにいます。日本食も好きで、ちらし丼やラーメンなどはシンガポールでも食べますよ。

 

―イップさんの信条を教えてください。

たくさんあってなかなか絞りきれないのですが、「やらぬ後悔よりやる後悔」でしょうか。自分のやりたいことや目標に向かって挑戦したなら、そこに後悔は生まれません。しかし、もし何もしなかったとしたら、その先ずっとそのことを考え引きずることになるでしょう。人生において大事なことは、目標を持ちそれに向かって絶えず努力することだと思っています。

 

―最後に、次の目標を教えてください

2020年の東京パラリンピックに出たいという気持ちはありますが、その頃には若いとはいえない年齢になっていますし、身体のコンディションのことなどもあるので、どうなるかはまだ分かりません。まずは来年、大学を無事に卒業してトレーニング生活に戻り、またシンガポールのスポーツシーンに戻ってきたいと思っています。

web315_aイップ・ピンシウ(Yip Pin Xiu)

1992年、シンガポール生まれ。6歳から水泳を始める。進行性の筋肉疾患である筋ジストロフィーを抱えながら、現在はS2(運動機能障害)の選手として活躍中。2008年の北京パラリンピックでは女子50m背泳ぎ(S3)でシンガポール初となる金メダルと女子50m自由形(C3)で銀メダルを獲得し、ナショナルデー・アワードで功労賞(Pinga Jas Gemilang)に選ばれた。2016年のリオパラリンピックでは女子100m背泳ぎ(S2)で世界新記録で金メダルを獲得、女子50m背泳ぎ(S2)でも金メダルを獲得した。シンガポールマネージメント大学(SMU)の学生でもある。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.315(2016年12月5日発行)」に掲載されたものです。(取材・写真:長島 清香)

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