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会計・税務相談

2016年12月5日

Q.弊社は駐在員1名のみの人員体制で、駐在員の給与は日本の本社から直接本人に支給されます。シンガポールで技能開発税を納付する義務があるでしょうか。

A:シンガポールで働く従業員(外国人も含む)を雇用する全ての事業主は、技能開発税を納付する義務があります。

 

背景:技能開発税(SDL)は、従業員の技能向上の奨励を目的として雇用主から徴収される税金です。徴収された税金は、技能開発基金(SDF)として運用され、従業員の研修費用の助成や失業者の再教育などに利用されています。SDLは、雇用のミスマッチを最小化し、労働市場が必要とする人材を供給するための政策であり、特に下級職者の技能訓練に焦点を当てています。そのため当初は課税対象を一定賃金以下の従業員に限定していましたが、2008年の法改正により、現在では報酬に関係なく全ての従業員を課税対象としています。

 

納税義務者:シンガポールで働く従業員を雇用する全ての事業主に納税義務があります。雇用主はシンガポールで登記された法人や事業に限られず、外国の会社であってもシンガポールで働く従業員を雇っている場合には納税義務があります。

 

課税対象となる従業員:その月に少しでもシンガポールで働いた従業員(有給休暇中の者も含む)が対象となります。ワークパスで就労する外国人やパートタイマー、臨時雇用された者なども含まれます。但し、以下の従業員は対象外とされます。
①個人に雇われている(事業としての雇用を除く)家政婦、庭師、運転手
②その月にシンガポールで全く働かなかった従業員(海外出張中など)
③所定の高等教育機関に在籍する学生が実習授業の一環で就労する場合
④所定の学校に在籍する生徒が学校の長期休暇中に限って就労する場合

左記のうち①または②に該当する従業員を雇用している場合には、SDLのウェブサイトにログインして、その従業員が対象除外者に該当する旨の宣誓を行うことにより、その従業員の分のSDLの納付が免除されます。

 

課税対象となる報酬:SDLの課税対象となる報酬は、給与、手当、歩合、有休買取、賞与など、役務提供の報酬として現金で支給されるものを全て含みます。例えば、同じ月に給与と賞与の両方が支給された場合には、その月に支給された報酬(給与も賞与も含む)の合計額に対して課税されます。

 

税率:2008年10月1日より、SDLの税率は従業員の月額総報酬の0.25%とされており、従業員1人当たりの納税額は最低2Sドル(月額報酬800Sドル以下)、最高11.25Sドル(月額報酬4,500Sドル以上)となっています。

 

納付:中央積立基金(CPF)庁がSDLの徴収を代行しており、CPFの対象となる従業員を1人でも雇用している場合には、CPFと合わせて従業員全員分のSDLをCPF庁に納付すればよいのですが、CPFの対象外である外国人従業員しか雇用していない場合には、シンガポール未来技能局(SSG)に直接納付しなければなりません。2013年より、雇用主が各自の納付状況などを確認できるシステムが導入され、これにログインすることにより毎月のSDLの納付もオンラインで行えるようになりました。SDLの納付期限は、CPFと同じく翌月の14日です。

 

SDFによる助成:雇用主が全額費用を負担して従業員に研修を受けさせた場合、その費用の一部が補助金として支給されます。ただし、助成の対象になるのはシンガポール国籍もしくは永住権を有する従業員に限られています。研修は、外部の業者が主催する講習だけでなく、社内で開催したものも対象になります。また従業員が自分で費用を負担して講習を受けた場合には、従業員本人に補助金が支給されます。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.315(2016年12月5日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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