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シンガポールの“税金あれこれ”「会社がやってくれるから」で本当に大丈夫?

2016年8月24日

シンガポールの“税金あれこれ”  第3回 シンガポール勤務者にかかる日本の税金

解説:AGSコンサルティングシンガポール株式会社 税理士 八鍬信幸氏

 

皆さんこんにちは。AGSコンサルティングの税理士の八鍬(やくわ)です。

 

「シンガポールの“税金あれこれ”」では、第1回で「所得税の基礎」、第2回で「シンガポールの個人所得税」を解説しました。今回は「シンガポール勤務者にかかる日本の税金」をテーマに、シンガポールで働く方にまつわる日本の税金について解説します。

 

日本の税理士としてシンガポールで働いていると、日本の税金についての質問をよく受けます。今回はその質問の中から、特に多く聞かれるものをまとめてみました。

 

日本の住民税

「シンガポールに住んでいるのですが、住民票は日本に残してあります。この場合、日本の住民税は課税されますか?」こういった質問をよく受けます。

 

答えとしては、「理論的には課税されませんが、実務的には課税されてしまいます」という回答になります。

 

なぜかというと、住民税はその年の1月1日現在で日本に居住している人を対象に課税される税金です。日本に居住しているか否かは、住民票の有無で決まるものではなく実態により判定されますので、実際に1月1日時点でシンガポールに住んでいるのであれば、理論的には住民税は課税されません。

 

ただし、住民税を徴収する市町村からすると、1月1日時点で日本に住んでいるか否かを判定する上で、ひとりひとりの実態までは確認できないので、実務上は住民票を基に判断しています。そのため、先ほどのような、理論的には課税されないが実務上課税されるという回答になるのです。

 

日本に住民票が残っている限り、基本的には市町村から住民税の納付書が送られてくると思います。ただし、各市町村によって対応も異なるようですが、日本に住んでいないことを市町村に通知して、住民税の課税もストップしてもらったというケースもあります。

 

なお住民税は、その人の前年の所得を元に計算するため、前年に日本で申告した所得がない場合は、住民票を残していても、そもそも住民税はかからないことになります。

 

市町村に問い合わせた場合、日本から1年以上の出国を予定している場合は、住民票も抜くよう案内を受けることになると思います。シンガポールに住んでいるのに住民税を払っているという方は、一度ご自身の市町村の窓口に相談してみるのも良いかもしれません。

 

日本の自宅の賃料収入

「シンガポール勤務期間中、日本のマンションを人に貸して賃料収入がある。この場合、シンガポールに住んでいても日本で申告しないといけないの?」こういった質問を受けることもあります。

 

答えとしては「計算の結果、課税所得がある場合は申告が必要です。課税所得が無い場合は不要です」という回答になります。

 

第1回の「所得税の基礎」で解説した通り、シンガポールに住んでいる方は日本の「非居住者」に該当し、日本では国内源泉所得にのみ課税されることになります。日本にある不動産の賃料収入については、日本の国内源泉所得に該当しますので、原則的に申告が必要です。

 

ただし、課税所得を計算する際に建物の減価償却費等の費用をマイナスすることができますので、計算した結果税金が発生しない場合もあります。まずは、課税所得があるかどうかの計算をしてみないと分かりませんので、専門家にお願いして一度試算してもらうのが良いと思います。

 

仲介先である不動産会社に対する貸付けという契約になっている場合も稀にあります。この場合は、賃料収入から所得税が源泉徴収されていることがあり、その場合には申告をすることによって、その源泉徴収された税金が帰ってくる可能性もあるので、ご自身の賃料収入が源泉徴収されているか否かの確認は重要です。

 

日本払い給与から源泉徴収される所得税“見合い”

駐在員の方からは「日本本社からも給与を支給されていますが、日本で所得税はかからないはずなのに給与から所得税がマイナスされています。本社のミスですか?」という質問もあります。

 

日本払いの給与の明細を見たとき、シンガポールで働いているにも関わらず「所得税」の項目で源泉徴収されていることに気が付いた、といったものです。

 

こちらについては、本社のミスという事もごく稀にありますが、所得税“見合い”の金額が引かれていることが理由で、ほとんどの場合ミスではありません。

 

どういうことかというと、赴任前の給与額を基に計算した所得税の金額相当額を毎月の給与から差し引いて会社でプールしておき、実際にシンガポールで所得税の納税額が確定したときに、そのプールしておいたお金でその個人所得税の支払いをするといったものです。実際の納税額が、プールしておいた金額より大きい場合は、会社がその分を負担してくれるというケースがほとんどです。

 

このシステムは多くの会社で採用されており、従業員個人としては日本で働いていた時と同等の所得税を支払えば、海外赴任により税金が増えた場合に会社が負担してくれるので、不利益を被ることがないという仕組みとなっています。

 

これを機に、ご自身の所得税の負担について把握していない場合は、会社とどういった取り決めになっているか確認してみてもいいかもしれません。

 

第3回の「シンガポール勤務者にかかる日本の税金」は以上になります。

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