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シンガポールの“税金あれこれ”「会社がやってくれるから」で本当に大丈夫?

2016年8月10日

シンガポールの“税金あれこれ”  第2回 シンガポールの個人所得税

解説:AGSコンサルティングシンガポール株式会社 公認会計士 林竜太(はやし りょうた)氏

 

皆さんこんにちは、AGSコンサルティング公認会計士の林竜太です。

 

連載第1回目では所得税の基礎についてお話しました。今回はシンガポールにおける個人所得税についてQ&A形式で解説します。シンガポールでの確定申告を会計事務所に任せているという方も、興味を持っていただけると幸いです。

 

原則として個人所得税は、シンガポールで生じた総所得から配偶者控除等を行い、算定された課税所得に対して累進課税されます。暦年課税なので、納税者は1月1日から12月31日までの所得につき、翌年の4月15日までにForm B1というフォーマットを利用して申告します。なお、電子申告の場合は4月18日が期限で、多くの方は電子申告していると思います。

 

納税者の申告に基づき税務当局が所得税を算定し、納税者にNotice of assessment(納税通知)を発行します。納税通知発行後一ヵ月以内に納税する必要がありますが、納税通知が発行されるタイミングは人により異なるため、払い忘れがないよう気を付ける必要があります。

 

それでは、以下のケースについてはどのような扱いになるのでしょうか。いずれもシンガポール居住者の日本人(非永住者)の方を対象としています。

 

Q1:カジノで勝ったのですが、この儲けは課税対象でしょうか?

課税対象ではありません。当局の見解によると、その理由は何と「Windfall(棚ボタ)だから」ということです。

 

Q2:会社負担の家賃も課税対象でしょうか?

会社負担の家賃も現物給与と見なされるため課税対象です。個人が家主と契約し、会社がその全額を負担する場合はその全額に課税され、会社が家主と契約する場合にも一定の計算で課税されます。

 

実はこの計算には建物の年次価値が用いられます。皆さんがお住まいの家にも税務当局が毎年算出する値段が付けられており、この値段は税務当局のホームページで調べることができます。

 

Q3:海外出張手当も課税対象でしょうか?

こちらは、税務当局が物価水準等を考慮して定めた各国の基準レートを上回った部分が課税されます。

 

2015年度は、日本出張の出張手当については日当93Sドル以上の部分に課税されました。例えば日本出張の日当が100Sドルだった場合は、7Sドル分に対して課税されることになります。2014年度の基準レートは185Sドルだったので、何とこの一年間で基準レートが半額になったことになります。レートの下落率を国別でみると日本はベネズエラに次いで世界2位で、どのような基準で判断されたのか理由が気になるところです。

 

Q4:海外出張が多いのですが、税金を減らせませんか?

Not Ordinary Resident(NOR)スキームを利用すれば税金を減らすことができます。この制度を使うと、給与所得をシンガポール勤務日数と海外勤務日数で按分し、シンガポール勤務日数に応じた分のみが課税所得となります。ただし、税額が全給与所得の10%以下の場合は全給与所得の10%が課税されます。

 

なおNORスキームの適用要件は、①ビジネス目的で年間90日以上海外に滞在すること、②全勤労所得が16万Sドル以上であることです。海外出張が多い方はこの制度が利用可能かもしれませんので、出張管理表をしっかりと作成されることをお薦めします。

 

以上、シンガポールの所得税にご興味を持っていただけたでしょうか。次回はシンガポール在住者の方向けに日本の税金について解説します。

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