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シンガポール星層解明

2016年8月1日

飛躍的拡大が期待されるシンガポールの日本食品市場

市場拡大のヒントは香港にあり
小売企業の品揃え戦略が需要を創出

次に香港との比較をしてみたい。図1で2015年における日本から香港とシンガポールに向けた主な食品の輸出金額を比較した。

 

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興味深い点として、輸出全体で見ると香港はシンガポールの8倍の規模となっているのだが、コメ(香港はシンガポールの1.4倍)、アルコール飲料(同2.0倍)、牛肉(同3.0倍)といった日本食レストランでの消費が中心と想定される食材については両国間の差が比較的小さい。香港には日本食レストランが約1,400店舗あると言われており、約1,100店舗と言われるシンガポールの日本食レストラン数の1.3倍の規模に留まっていることが背景として考えられる。
一方、牛乳・乳製品(同7.3倍)、菓子(同7.6倍)、果物(同17.7倍)といった主に家庭での消費が中心、すなわち百貨店、食品スーパーやコンビニが主な販路と想定される食材については両国間で大きな開きが存在している。図2にある通り、香港はシンガポールに比べて多数の日系小売企業が進出していることが大きな要因として挙げられるのだが、筆者はこの日系小売企業に対する販路の多寡に加えて、現地小売企業によるマーチャンダイジング(品揃え戦略)の違いが、両国間におけるこれらの食材の販売量、すなわち日本からの輸出額の差異に影響していると考えている。

 

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307web-3具体的に、日本から両国に向けた輸出品目の中で上位を占める菓子を例にとって考えてみる。セブンイレブンなど香港のコンビニでは棚に陳列されたお菓子の相当数が日本製であり、日本のコンビニにいると錯覚すると言っても過言ではないほど日本製の商品の品揃えが充実している。香港の消費者にとって日本製のお菓子はもはや「特別な輸入品」ではなく、「普段使いの日常品」としての存在感を持つに至っている。一方のシンガポールにおいては、日系小売企業を除き、日本のお菓子はタイやマレーシアで生産・輸入されたものが一部ある場合がほとんどであり、日本からの輸入品はごく僅かか皆無に等しい状況であったが、奇しくも本稿を最終校正中の7月18日には、シンガポールのセブンイレブン(日本の7&iが経営に関わらないフランチャイズ方式で展開)が、日本から7&iのPB商品を輸入し全店で販売することを発表しており、筆者はこの「画期的なニュース」を今後の市場拡大の成否を占う試金石とみている。

 

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