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シンガポール星層解明

2016年8月1日

飛躍的拡大が期待されるシンガポールの日本食品市場

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シンガポールへの輸出額はアジアで7位
日本の食は伸びしろが見込まれる成長市場

シンガポールにおける「日本の食」が拡大に向けた転機を迎えている。6月23日に投開票された欧州連合(EU)離脱の賛否を問う英国の国民投票は、離脱支持が過半数を上回り勝利した。筆者の周りでは、やれポンド安でロンドンに買い物旅行に行くやらポンドへの両替に行列するやら、離脱のニュースを好都合と捉えているケースが目立っている。一方の日本では、円高方向への動きが進むにつれて、足下では輸出企業の業績に対する影響が懸念されている。安倍政権が「攻めの農業」の柱とする農林水産物・食品の輸出も例外ではなく、これまで右肩上がりで拡大を続け、2015年には7,451億円と過去最高値を記録した輸出額の一層の拡大にとって逆風となりかねない。
日本の農林水産物・食品の輸出額を地域別でみると、日本からの物理的距離の近さや日本食・日本文化への人気度を背景にアジアが74%を占めている。その中でも香港への輸出額は2015年で年1,794億円と世界で1位の規模を誇っており、輸出額が223億円とアジア内ですら7位の規模に留まるシンガポールとは大きな差がある。香港とシンガポールは人口がそれぞれ700万人、600万人と同等規模であり、ともに食糧自給率が1割程度であることに加え、輸入の制約が比較的小さく、日本食材の浸透度が高く定着した市場であるにも関わらず、である。
本稿では、日本からシンガポールへの食品の輸出の現状と市場拡大に向けた課題および方策を、シンガポールとマクロ環境が似通った香港との比較も踏まえる形で考察していきたい。

 

「輸出の拡大」は物流事業者主導で推進
「輸入の拡大」には購買体験の改善が必須

まずは日本の農林水産物・食品の海外への輸出拡大に向けた官民の取り組みを見てみたい。2015年に過去最高値を記録した輸出額につき、政府は2020年までとしていた農林水産物や食品の輸出額を年1兆円とする目標を1年前倒しして達成する考えを表明している。それに伴い農林水産省と経済産業省は局長級の人事交流を発表するなど、省間の垣根を越えた連携で輸出の促進を後押ししている。
ここシンガポールにおいて日本の各地方自治体は、農林水産物・食品のプロモーションを盛んに実施している。具体的には、地域の食品事業者とともに来星し、日本大使館やレストランでのレセプション、日系のデパートや食品スーパーでの販売促進活動、現地の輸入業者や小売企業のバイヤーとの商談会などを行っている。
一方の企業サイドにおける代表的な取り組みとしては、ヤマト運輸とANA Cargoが沖縄に設置した物流ハブを基点に日本各地の農水産品をアジア圏に配送する物流ネットワークの構築が挙げられる。香港、台湾に続きシンガポール向けに2015年8月に開始されたこのサービスを利用すれば、日本全国各地の地方県産品などを集荷当日に沖縄まで輸送したうえで翌日深夜に通関を済ませ、同早朝にはシンガポールに配送することが可能になる。両社は愛媛県、宮崎県、三重県と協定を締結し、各県内の生産者や事業者の輸出拡大を物流面から支援している。
これらは日本を起点に「輸出」の拡大に焦点を当てた取り組みであるが、シンガポールで日本の農林水産物や食品の「輸入」の拡大に取り組む事例として、伊勢丹シンガポールが提供する産地直送の「お取り寄せ」サービスが挙げられる。シンガポールの消費者は、伊勢丹シンガポールのネット店舗上で日本産の生鮮品を注文し、ヤマト運輸とANA Cargoが提供する「国際クール宅急便」などを通じて、6~14日以内には自宅で受け取ることが可能になっている。
2016年1月のサービス開始時には日本から森山裕農林水産大臣が来星しトップセールスを行ったのだが、開始から半年が経過した7月4日時点においてネット店舗を見る限りでは、サービスの利用が順調に進んでいないのではないかとの印象が拭えない。というのも、現在取り扱っている食材は、年内の計画目標である30品目に対して、4種類計9品目と、「商品を選ぶ楽しみ」が欠如した限定的な品揃えに留まっていると言わざるを得ないからである。

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