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シンガポール星層解明

2016年6月6日

未知なる可能性を秘めたシンガポールのネット小売市場の展望

リアル店舗の高い賃料と消費者の英語力がネット小売市場の発展に作用

次に消費者がネット上で何を購入しているかを見てみたい。図1は購入率の高い上位5つの商品カテゴリを比較したものだが、市場環境を理解する上で興味深い点を2つ指摘したい。

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1点目は、アパレル・フットウェアが占める割合が日本の12%に対してシンガポールでは24%に及んでいる点である。その背景を考えるに、有名ブランド店が立ち並ぶオーチャードの賃料は銀座に比べて約40%も高く、東京23区とほぼ同じ広さのシンガポールでリアル店舗を運営するコストは日本に比べて割高とならざるを得ない。この点において、賃料を価格に転嫁しない分だけ価格訴求力を持つネット店舗に消費者が流れている可能性がある。実際に大手不動産会社キャピタランドが運営するシンガポールのショッピングモールでは、2010年から2014年にかけて飲食とヘルス&ビューティー系のテナントは増加しているのに対し、ファッション、靴・カバン、時計・宝飾のいわゆるネット上で容易に売買可能な商品を扱うテナントは減少しており、消費者がアパレル・フットウェアを購入する先がリアルからネット店舗へシフトしていることが伺える結果となっている。

 

また、シンガポールのネット小売市場では国外からの購入、すなわち「越境EC」が約60%を占めると言われており、約20%と言われる日本との差が際立っている。人口が約550万人と市場規模が小さいシンガポールでは、日本とは異なり欧米のネット小売企業が品揃えやフルフィルメント(受注から配送、決済までのプロセス)を現地化したネット店舗を運営することが稀であること、さらに英語が公用語の1つとなっているために大半の消費者が海外のネット店舗をストレスなく利用できることが影響していると考えられる。実際にシンガポールのネット小売企業の上位10社には、同国向けの専用サイトを持たない米国のAmazon.comやアパレルを販売する英国のASOS.comが含まれており、アパレル・フットウェアがネット小売市場全体に占める割合が高い理由を物語っている。

 

2点目は、上位5つの商品カテゴリが全体に占める割合が日本では約7割に過ぎないのに対し、シンガポールでは約9割をも占めている点である。すなわち日本では、アマゾンジャパンが「リフォームストア」などの専門店や「お坊さん便」を展開しているように、取引される商品カテゴリが「ロングテール」化されているのだが、シンガポールでは未だにその多くが限定的な商品カテゴリの取引にとどまっている。裏を返せば、これまでネット上での購入など想像できなかった製品やサービスが、今後シンガポールにおいても急速に流通する可能性を示している。

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