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スペシャルインタビュー

2013年3月4日

PHUNK × ANREALAGE 新しい価値を生むコラボに学ぶ

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「HELLO, SHIBUYA TOKYO」のポップアップストア会場にて。写真左よりPHUNKのメルヴィン・チー、ジャクソン・タン、ウィリアム・チャン、アルヴィン・タンとANREALAGEの森永邦彦

東京・渋谷とシンガポールの気鋭のクリエイターたちが集い、協働するプラットフォームを提供する「HELLO, SHIBUYA TOKYO」が2月22日より始まった。(経済産業省のクール・ジャパン戦略推進事業、株式会社パルコ主催)

洋服やグッズなどを実際手に取って見られるポップアップショップ(プラザシンガプーラ1階、3月10日まで)、レッド・ドット・ミュージアムで開催されたファッションショーも好評を博し、クリエイティブ産業における継続的な機会創出が期待されている。中でも、シンガポールを代表するクリエイター集団「PHUNK(ファンク)」と、日本で注目を集める次世代のファッションデザイナー森永邦彦による「ANREALAGE(アンリアレイジ)」のコラボレーションは、ひと際訪れる人々の目を引いた。そのコラボレーションの妙を知るインタビューが実現した。

AsiaX

今回のコラボレーションの経緯とお互いの印象を教えて下さい。

PHUNK

日本との関わりは数年前からあり、2010年にアーティストの田名網敬一さんとコラボレーション作品を作成した展覧会のほか、同年に、東京で個展も開催しました。日本の我々のマネジメント・パートナーとも、次はファッションデザイナーやミュージシャンと何か模索してみたいとよく話していた折、今回のプロジェクトの話が舞い込んで来て。とてもうれしかったです。
主催側から日本人のデザイナーを3人紹介された際、デザインそのもの、デザイナーの考え方、それから我々の立ち位置を照らし合わせて、ぜひANREALAGEと一緒にやりたいと。デザインにグラフィックの要素が取り入れられ、ビジュアル的に強いメッセージがあり、洋服のシルエットやカッティングも美しい。特にアルファベットをモチーフにしたカノンシリーズのデザインは、すごくパワフルで、偶然にも僕らもアルファベットのタイポグラフィーを作品にしているし、これはいけるとすぐにピンときました。

森永邦彦(ANREALAGE、以下森永)

ANREALAGEのファッションで自分たちを表現していく上で、ファッションを売りものとしてだけでなく、もっと価値のあるものにしたいと考えています。眺めるだけで終わらせたくないような、アートの中に強い表現力を持っているPHUNKの作品に、ANREALAGEが加わる事でさらに価値が増すようなことができればいいなと。
つまり、アートには、見て感じるという重要性がありながら、身にまとうことでその作品の意味が変化したり、新たな価値が加わる潜在的な力があるはず。最近は、そういうアートをまとうようなファッションを見かける機会も少ないので、今回、PHUNKのコラボの相手に選んで頂いて光栄でした。
PHUNKの第一印象は、シンプルで過剰。フォルムはアルファベットを使っていたりとシンプルで身近なものでも、そこに描き込まれたものの細部や配色は、現実を超越している。その尋常でない細かさがすごい。自分にも「神は細部に宿る」という信念があり、ディテールが全体を作り出し、ディテールにこだわったものづくりをしたいと考えています。その根本の部分が、PHUNKの作品と共通していると思いました。

AsiaX

アルファベットを着るというのはとてもユニークです。カノンシリーズについて教えてください。

森永

洋服は、アルファベットと関係が深い。例えば、Tシャツ、Yシャツ、Pコートといった名称からもわかります。Tシャツは、洋服の中で最もシンプルで着やすいモチーフであり美しい形といわれていますが、Aでも他のアルファベットでも洋服は作れるし、美しく着れるという発想をすることで、一石を投じたいと思ったのがきっかけです。僕はシンプルなアルファベット自体が好き。26文字からなるアルファベットはシンプルだからこそこれだけ世界に広がったし、26文字で世界中を制覇していて、ある意味凶暴性とかそのシンプルさ故の怖さも含めて、素晴らしいモチーフです。26文字AからZで、ひとつ黄金律になっているという発想から、カノンシリーズと名付けました。

AsiaX

コラボレーションの成功の秘訣は何でしょう。

PHUNK

コラボレーションは、常に共通のマインドやビジョンを持った人を探すことが大事ですが、お互い似すぎたもの同士であっても発展性がない。違いがあるからこそ、刺激や挑戦が生まれるわけです。また、感性をフルに使って、お互いを尊重して相互理解の努力をすることが全体を繋げる上で大事です。ANREALAGEのスタジオに伺った時に、スタッフが細部にわたり手作業を施しているところを見て、尊敬と共にとても感動しましたし、これは面白いコラボになると確信しました。

森永

やはり、相手をリスペクトする気持ち。お互い強い個性があるので、作品の中できちんとその個性がバランス良く両立しないといけません。強い方に負けてはいけないという気持ちと、そこと上手く調和されたいなという気持ちの両方がありました。今回は、僕からはシェイプを、PHUNKからはアートワークを。それが融合して、とてもユニークな良いものができて、本当にうれしく思っています。

AsiaX

ビジネスのためのコラボレーションと、アートのそれとでは何か違いますか。

PHUNK

僕たちにとって発想や取り組み方の基本姿勢は変わらない。今回は、平面のキャンバスではなく、着られるアートを作ったという感じ。今回、一点ものやエディションのある洋服がありますが、それもアートを制作するのと似ています。

AsiaX

次回再び、また別のコラボをしてみたいですか。

PHUNK

もちろん!きっと何か面白いことができる。次回は、もう少し時間をかけて、更に踏みこんだ話をしながら、コラボレーションしてみたい。AからZまですべての作品を作ってもいいかも。

森永

僕のシリーズにある、丸、三角、四角といった立体の3Dの洋服のコラボも、面白いかもしれません。

AsiaX

今後に向けて、お互いへエールをお願いします。

PHUNK

ANREALAGEが、今後も象徴的な日本のファッションデザイナーとなり、世界を舞台に活躍していきますように!

森永

うれしいです。同世代ですが、違うジャンルにいて、これだけ刺激を与えてくれる人達がいるというのはすごい。むしろ違うジャンルにいてくれて良かった。同じジャンルにいたら、凹んでいたかも。今後もいい関係を築いていけたら良いなと思います。

AsiaX

今後の方向性を教えて下さい。

森永

将来は、海外で勝負したいですね。アジアやほかの地域で、これまでANREALAGEが流通していないところで、やっていきたい。ファッションで何か新しいこと、面白い価値を与えるようなことに挑戦するブランドが少なくなっているので、次の世代やほかの国の人々に夢を与えられるような、洋服ってすごいと思ってもらえるようなことをコレクションを通じてやっていきたいです。

PHUNK

今のメンバー4人で学生時代に音楽バンドとしてユニットを組んで以来、音楽の代りにグラフィックデザインを通して、それぞれの個性と才能を活かして商業用のデザインプロジェクトを中心に活動してきました。自分たちらしい芸術的なデザインを確立しましたが、今後は、エージェント的なデザイン活動は止めて、PHUNKとしてアートに終始した活動に絞り込んで行く予定です。デザインの要素を取り込んだアートを手がけるクリエイティブ集団として、去年から活動の方向性を変えました。PHUNKとして作品を作り、海外のブランドや団体などとのコラボレーションに特化するつもりです。

AsiaX

シンガポールから日本へ、何か継続性のあるプロジェクトとして持ち出せるものがあるとしたら何でしょう。

PHUNK

今回のプロジェクトの成功を受けて、「HELLO SINGAPORE」的なイベントを日本で開催するのもいい。シンガポール独特のもの、例えば、ラクサヌードル、マーライオンといった、象徴的でかつ日常的なものに、日本のデザイナーがデザインを施し、一部商品化もする。クリエイター同士の相互交流が図れるのと、日本の人々にももっとシンガポールを知ってもらえる。堅苦しく敷居の高いイベント等にするのでなく、日常的に我々が購入するものに、感度や質の高いデザインが施されれば、きっと面白いものができるし、ビジネスとしても成り立つのでは。買って着られる、食べられる。より大衆にアプローチするのがキーだと思います。

 

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森永邦彦

東京都出身。早稲田大学卒業。早大在学中にバンタンデザイン研究所キャリアスクールに通い、服づくりをはじめる。2003年、「ANREALAGE(アンリアレジ)」を設立。「AN・REAL・AGE」とは”日常、非日常、時代”を意味する。国内外での受賞多数、次世代の日本のファッション界を牽引する1人として注目を集める。

PHUNK

シンガポール出身。ラサール芸術学院で共に学んだジャクソン・タン、ウィリアム・チャン、アルヴィン・タン、メルヴィン・チーの4人が、1994年に結成。アジアで最も刺激的なコンテンポラリーアート・デザインチームのひとつ。2008年プレジデント・デザイン・アワード受賞。

 

2013年03月04日
文= 桑島千春

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