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スペシャルインタビュー

2014年5月7日

次世代へ進化し続けるバイオリンを作る 国境を越えたアルティジャーノ

バイオリン職人西村翔太郎(にしむらしょうたろう)

スクリーンショット 2015-06-30 11.20.20去る4月8日、世界的なコンクールで受賞歴のあるバイオリン・アルティジャーノ(職人)西村翔太郎氏と、世界最高峰のバイオリン、ストラディバリウスを制作した家系の末裔で作曲家のルカ・ストラディバリ氏を招いた「ルカ・ストラディバリ プレミアム・コンサート」がエスプラネードで開催された。コンサートは、西村氏のワークショップと、彼が製作したバイオリンやヴィオラ、チェロなどの楽器でストラディバリ氏の楽曲を演奏するユニークな二部構成となった。来星した西村氏に話を聞いた。

―コンサートの感想を教えてください。

来場した方々は、音楽や楽器を身近に感じている雰囲気がすでにあり、みな温かくて気さく。アカデミズム(権威)を無駄にあがめず良いものは良いとして、気軽に話しかけてくれてうれしかったです。日本では、かしこまって演奏者と来場者に距離を感じることがあります。

 

 

―コンサート開催の経緯を教えてください。

4年前にイタリアのクレモナで、コンサート主催者の河原恵美さんの通訳をしました。そのご縁で私のバイオリンを購入してくださり、納品のために来星しました。その際に在星の演奏家たちと知り合い、若手で何かやろうと意気投合して。ならば私の友人の作曲家、ルカ・ストラディバリも巻き込もうということになったんです。
ストラディバリ家は、初代アントニオ・ストラディバリが名器ストラディバリウスを17世紀に生んで以降、音楽から離れていましたが、8代目のルカが作曲家になり、ようやく音楽に帰ってきた。そして、400年間たゆまず進化してきた製作技術で作られた現代の弦楽器たち。ストラディバリ家の血と、それが生んだ技術の再会がテーマでした。シンガポールは多様な文化が共存し、若者が文化を志向する土壌があるので、このテーマが受け入れられるはずと考えました。

―シンガポールで西村さんの楽器を使っている演奏家はいますか?

シンガポール交響楽団の元コンサートマスターで現在シンガポール国立大学教授のロシア人、アレクサンダー・ソプテル氏が私のバイオリンを持っています。アレクサンダーさんは音楽の中に生きているような素晴らしい演奏家です。楽器を芯から鳴らすロシア式の弾き方をされ、隅々まで鳴らしてくれるので楽器の響き方がぜんぜん違う。作り手としての喜びを感じることができる、作り甲斐のある方。今後も可能な限り、彼の楽器の調整に来星する予定です。

―バイオリン職人になったきっかけを教えてください。

小・中学時代トランペットを演奏しており、幼少から手先も器用だったのでトランペット職人になりたいと思ってました。しかし、調べるうちに製作の過程が流れ作業的で、自分が思い描いた職人にはなれないことがわかったんです。その頃、NHKのテレビ番組であるバイオリンの演奏を観てそれに引き込まれ、バイオリンを作りたいと決心。中学3年生の時、日本のバイオリン職人たちを訪ねて全国を回りました。みなさん親身に相談に乗ってくださり、今後はイタリアの技術が主流になるから、それが生まれた本場で学ぶべきというアドバイスを受けました。そして高校卒業後に単身イタリアへ渡り、今に至ります。

―今もクレモナを拠点にするのはなぜですか?

小さい町ではありますが、バイオリンの故郷として、音響学会や製作に必要な素材の研究発表の場として、世界から最新技術や情報が集まるからです。門外不出の名器も1年に1度集めて、展覧会や研究会が開催されます。常に新しい情報や技術を取り入れて少し先の時代を考えていかないと、バイオリンが過去のものになってしまう。これは伝統技術を受け継ぐものの責任と考えています。

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