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法律相談

2013年1月21日

Q.シンガポールの会社法が大きく改正されると聞きました。詳細を教えてください。

シンガポール会社法の改正

2007年、シンガポール財務省(Ministry of Finance、MOF)は、シンガポールが国際的なビジネスの中心地であり続けることを目指して、シンガポール会社法(Companies Act)改正のための運営委員会(Steering Committee、SC)を設置し、会社法の抜本的な見直しに着手しました。

 

SCは、2011年4月に報告書を公表し、217項目にもおよぶ改正勧告を行いました。これに対し、MOFは、昨年(2012年)10月、改正勧告に対する考え方を公表し、192項目をそのままで、また17項目は修正の上、それぞれ受け入れ、8項目は受け入れないことを明らかにしました。

 

具体的な改正内容は多岐に亘りますので、ここではAccounting and Corporate Regulatory Authority(ACRA)が重要なものとして挙げているものをご紹介しておきます※1

 

(1) Small Company制度の導入

新たにSmall Companyというカテゴリーが導入され、該当する会社は会計監査が免除されます※2 。具体的な要件は、(a) Private Company※3であること、かつ、(b) (i) 年間売上高が1,000万シンガポールドル以下、(ii) 総資産が1,000万シンガポールドル以下、(iii) 従業員数が50名以下、の各要件のうち2つを満たすこと、とされます。現行制度上は、年間売上高が500万シンガポールドル以下のExempt Private Company (EPC) ※4だけが会計監査を免除されていましたが、改正により、シンガポールの全会社の10%にあたる約25,000社が新たに制度の恩恵を受ける見込みです。なお、これに伴い、既存のEPC制度の廃止も検討されましたが、両制度は並存することとなりました。

 

(2) CEOへの情報開示義務の拡大

現行制度上、取締役にのみ課されている、利益相反取引や関係会社を含めた会社の株式の保有状況に関する情報開示義務がCEOにまで拡大されることになります。

 

(3) ACRAへの取締役の住所地の登記に関し、代替地の利用を許容

現行制度では、取締役の住所地をACRAに登記しなければならず、これは一般に公開されていましたが、プライバシー保護の観点から、代替地を登録することが可能になります。

 

(4) その他

①休眠会社に適用される会計に関する規制の緩和、②電子的方法による会社から株主への通知等にかかる規制の緩和、③Public Companyにおける複数議決権株式および無議決権株式の発行の許容、および④他人のために株式を保有する株主による議決権の不統一行使の許容、も重要な改正点として列挙されています。

 

会社法改正にかかる今後のスケジュールですが、2013年初めに、MOFによる一般からの意見聴取の実施が予定されています。この結果を踏まえ、2013年度中の施行を目指し、改正法案が国会で審議される予定です。2013年には、雇用法も改正に向けた動きがあるものと予想されており、ビジネス法務にとっては変化の多い年になりそうです。

 

※1 なお、これらは、上記MOFの考え方に基づくものであり、改正された会社法そのものではなく、今後変更される可能性がありますので、ご留意ください。

※2 ただし、計算書類の作成義務や一定の株主による会計監査請求権は維持されます。

※3 株式の譲渡制限があり、株主数が50以下の会社。

※4 Private Companyのうち、株主数が20以下で法人株主がいない会社や、国が指定する会社。

取材協力=Kelvin Chia Partnership 岡本直己

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.227(2013年01月21日発行)」に掲載されたものです。

本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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