2011年10月17日
Q.日本から来る駐在者のための就業許可証の取得について教えてください。
就業許可証の取得について(1)
日本の中小企業のシンガポール子会社の取締役であるAさんと弁護士との対話という形式でご説明いたします。
Aさん
事業が軌道に乗ってきたので、日本本社から営業担当者(B)をシンガポールに駐在させることにしました。Bの就業許可証の取得について教えてください。
弁護士
まず、Bさんがエンプロイメントパス(EP)とSパスのどちらを取得できるか確認する必要がありますね。Bさんの学歴と職歴を教えていただけますでしょうか?
Aさん
Bは日本の4年制大学を卒業して、日本の本社に入社し、今年で5年目になります。学歴は就業許可証の取得に関係があるのでしょうか?
弁護士
学歴は大いに関係があります。原則としてEPを取得するためにはシンガポール人材省(MOM)の認定大学を卒業している必要があります。
Aさん
なるほど。そうすると認定大学を卒業していないとEPは取得できないのでしょうか?
弁護士
必ずしも認定大学を卒業していないといけないというわけではありません。認定大学を卒業していない場合でも、専門資格や特殊技術を持っていてその分野での職務経験がある方などはEPを取得できる可能性があります。Bさんの卒業大学はMOMの認定大学のようですね。では、次にBさんのシンガポールでの月給額を教えていただけますでしょうか?
Aさん
まだ決めていません。お恥ずかしながら、うちの会社も経営が厳しいので、なるべく安くしたいのですが、EP取得のためには月給額の最低基準額があると聞きました。
弁護士
そうです、2011年中にEP(Q1)を申請する場合には最低基準額はS$2,800(手当て等は含まない)になります。
Aさん
来年になると基準が変更されるのでしょうか?
弁護士
実は今年8月に来年から適用される新たな基準が発表されました。来年からは更にEP取得基準が厳格化されることになります。具体的には、EP(Q1)の申請者で新卒者の場合には①高度な教育機関を卒業し、②月給額がS$3,000以上であることが条件となります。一方、職務経験者の場合には、職務経験や能力に応じて新卒者(S$3,000)よりも高い給与を得ることが条件となっています。Bさんは5年の職務経験がありますので、来年申請するのであれば、給料は職務経験に見合った金額、少なくともS$3,000以上にしなければなりません。
Aさん
職務経験者の場合の具体的な金額は決まっていないのでしょうか?
弁護士
決まっていないため、来年以降のMOMの運用を見てみないと分かりません。
Aさん
「高度な教育機関」というのは現在のMOMの認定大学とは違うのでしょうか?
弁護士
現在より厳格化される可能性があります。今年の後半にはMOMのウェブサイトに公開されることになっていますので、要確認ですね。
※以下次回(アジアエックスVol.203、2012年1月1日発行)に続く
取材協力=Kelvin Chia Partnership 関川 裕
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.199(2010年10月17日発行)」に掲載されたものです。
本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。