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法律相談

2011年2月14日

Q.当社はカタリスト上場を検討しています。上場準備に際しては、法律事務所へ依頼することも必要になると聞いたのですが、法律事務所は企業の上場準備にあたってどんな役割を担っているのですか?

カタリスト上場における法律事務所の役割

法律事務所がカタリスト上場へ関与する場面には、大きく分けて、発行体側カウンセルとして関与する場合とスポンサー側カウンセルとして関与する場合の二通りがあります。ご質問に沿って、このうち前者の場合における役割をご説明いたします。

 

発行体側カウンセルとして関与する法律事務所の具体的な役割としては以下のようなものがあります。

 

  1. 上場グループ会社のリストラクチャリングに関する助言・関連作業
  2. Legal Due Diligence
  3. Legal Due Diligenceで見つかった問題点の改善等に関する助言
  4. Offer Documentの作成
  5. その他関連契約書等の作成及びレビュー

 

上場グループ会社のリストラクチャリングは、上場主体を選定し、必要に応じてグループ会社の整理を行う作業です。例えば、上場用のシンガポール現地法人持株会社を設立するストラクチャーのほか、上場規則では、シンガポール以外の外国で設立された会社も上場が可能とされているため、かかるシンガポール現地法人を設立することなく、日本の株式会社をそのまま上場させるというストラクチャーも規則上は可能です。また、事業の一部分のみを上場の対象としたい場合には、対象事業の切り出し作業が必要になるかもしれません。こうした作業にあたって、法的な側面から助言し、必要に応じて関連書類の作成、レビューなどを行うのがこの場面における法律事務所の役割ということになります。

 

Legal Due Diligenceは、日本語では、「法的監査」などと訳されているかと思います。発行体の株主総会・取締役会議事録、社内規則、重要な契約等の会社資料のレビュー、役員・従業員へのインタビュー、訴訟に関するCourt Research等を実施して、最終的にはレポート(Due Diligence Report)の形にまとめます。目的は大きく分けて2つあり、1つは上場に際しての問題点を発見することであり、もう1つは後にご説明するOffer Document作成のための情報収集を行うことです。調査範囲は、会社設立手続の有効性、権利能力、許認可関係の確認から始まり、事業の運営状況、資本・株主の状況、内部組織の構成、コンプライアンスの状況、会社資産、重要な契約、重大な訴訟など広範囲に及びます。日本企業が関連している場合には、日本の法律事務所とシンガポールの法律事務所との連携が必要となってきます。

Legal Due Diligenceで問題が見つかった場合には、その解消に向けた法的アドバイスも法律事務所が行います。例えば、上場しようとする発行体の定款がカタリストの上場規則のAppendix 4Cに適合していなかった場合には、それに適合するように定款変更を行うことが必要になるかもしれません。

 

Due Diligenceが終わると、Offer Documentの作成段階へと移ります。Offer Documentは、カタリストで必要となる募集要項のことで、メインボードにおいて必要となるProspectus(目論見書)とは提出先が異なりますが、開示基準や開示事項は基本的に同じと考えていただいて結構です。

 

最後に、上場に関連するManagement and Underwriting Agreement、Placement Agreement等の契約書、役員等の宣誓書(Declaration)などその他の書類を上場しようとする発行体のために作成したり、レビューしたりする作業も法律事務所の役割となります。

取材協力=Kelvin Chia Partnership 大矢 和秀

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.183(2011年02月14日発行)」に掲載されたものです。

本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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