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法律相談

2010年7月19日

Q.故人のシンガポールにある財産について相続手続きを行う場合には、ProbateやLetters of Administrationというものをシンガポールの裁判所から取得しなければならないと聞きましたが、このProbate、Letters of Administrationとはどのような手続きなのでしょうか?日本の場合とどのような点が違うのでしょうか?

シンガポールでの相続手続き

日本では故人の財産(遺産)の分割に関して相続人全員が合意すれば(実際には遺産分割協議書という形で合意内容を書面化します)、裁判所の関与なしに遺産分割を行うこともできますが、シンガポールではたとえ相続人全員が合意していたとしても裁判所の関与が必要とされる点で、日本と異なります。

 

ご質問のProbateは検認状または遺言執行状、Letters of Administrationは遺産管理状と訳されますが、いずれも裁判所が出す命令書になります。そして、故人が遺言(will)を残した場合に必要とされるのがProbate、故人が遺言を残さなかった場合に必要とされるのがLetters of Administrationになります。したがって、シンガポールでは、遺言の有無によってProbateとLetters of Administrationのどちらかの手続きをとることになります。(なお、遺言が残された場合でもその中で遺言執行者の指定が行われていない場合、または遺言者(故人)よりも先に遺言執行者が死亡してしまった場合には、Letters of Administrationの手続きを行うことになります)。

 

まず、Probateとは、遺言を有効なものと認めて、遺言でなされた遺言執行者(executor)の指定を承認し、その義務を遂行する権限をその遺言執行者に正式に付与する裁判所の命令書になります。遺言には、どのような形で自分の財産を相続人等に配分するか記載するとともに、きちんと財産(遺産)の配分を遺言に従って責任を持って行う人(遺言執行者)を指定するのが一般ですが、Probateの手続きは、このように遺言で指定された遺言執行者がその遺言にしたがって行う権限があると裁判書が正式に認める手続きになります。Probateの取得の申立てを行うことができるのは、遺言内で指定された遺言執行者のみとなります。

 

これに対して、Letters of Administrationとは、遺言がないため、裁判所が故人の財産を管理する遺産管理人(administrator)を選任し、遺産管理を行うための権限を付与する裁判所の命令書を言います。遺産管理人は、故人の親族の中から選ぶのが通常です。ただし、親族であってもその地位によって遺産管理人となることのできる優先順位が法律で定められており、故人が独身の場合はその両親が兄弟姉妹よりも、故人が結婚していた場合はその妻が子供よりも優先されるとされています。また、相続人の中に未成年者(21歳未満)がいる場合は、その未成年者の利益を守るために遺産管理人が2名以上選任されなければならないとされています。そのほか、遺産の価値が25万シンガポールドルを超える場合、原則として保証人2名が要求されます。

 

両者の手続きは、遺産の価値が300万シンガポールドル以下の場合は下級裁判所(Subordinate Court)、300万シンガポールドルを超える場合は高等法院(High Court)に申し立てることになります。個人でこれらの手続きを行うこともできますが、要求される必要資料は、手続きによる違いはありますが、遺言、死亡証明書、結婚証明書、出生証明書、財産一覧表、財産評価証明書、宣誓供述書(Affidavit)、外国語文書の場合はその翻訳などと多岐にわたるとともに、故人等がシンガポール以外の外国籍の場合にはその外国法における相続人の範囲等を説明した当該外国弁護士の法律意見書なども必要となってきますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

取材協力=Kelvin Chia Partnership 濱田 和成

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.171(2010年07月19日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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