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法律相談

2009年10月19日

Q.日本人でもPR(Permanent Resident)になるとCPFという基金に加入しなければならないと聞きましたが、これはどのようなものなのでしょうか。

CPF制度について

CPF(Central Provident Fund)とは、簡単に言えば、政府が税金を使って国民の福祉に責任を持つ代わりに、国民に貯蓄を強制する仕組みです。CPFの加入者は、毎月の給料から一定額を積み立てることが義務づけられますが、雇用者もまた、加入者のために一定額を拠出しなければなりません。加入者は、積み立てた貯蓄を使って医療費やHDB(公団住宅)の購入費に充てたり、老後の生活資金とすることができます。

 

加入者のCPF口座には、住宅の購入、CPF保険、投資、教育のために使える「通常口座(Ordinary Account)」、老後資金のための投資を行う「特別口座(Special Account)」、入院費用や一定の医療保険の支払いのための「医療口座(Medisave Account)」の3つがあります。これらの口座に蓄えられた資金には、政府が保証する利息が付きます。2008年度及び2009年度の場合、通常口座の資金には年間2.5%、それ以外の口座の資金には年間4%の利息が付き、さらに、通常口座の残高のうち2万ドル、全ての口座の合計の残高のうち6万ドルまでに関しては、1%の利息が上記の利息に上乗せされます。

 

加入者が55歳未満の場合には、通常口座の資金は、特別口座に移転することができます。ただし、その逆の移転はできません。

 

加入者が55歳に達すると、将来受け取る年金の資金のために、通常口座及び特別口座の中から一定額を退職口座(Retirement Account)という新たな口座に移さなければなりません。両口座の残高が195,000ドルを超える場合に退職口座に移さなければならない金額は、2009年7月からは、117,000ドルとされています。加入者は、退職口座に移した残りの通常口座・特別口座の資金を一定限度まで引き出すことができますが、そのまま口座に維持して利息を得ることもできます。

 

加入者は、一定の年齢になれば毎月年金のような形で給付を受けることができますが、これは自分が蓄えた資金に利息が付いたものであり、それ以上の給付を受けられるわけではありません。

 

加入者が仕事をして得る給与からCPFへ積み立てる割合は、加入者の職業(私企業か公務員かなど)と年齢により異なりますが、加入者が私企業の従業員である場合には、加入者が50歳になるまでは、加入者は給与の20%を毎月積み立て、雇用者は加入者の給与の14.5%相当を毎月拠出することになります。給与に対するCPFの積立て割合は、50歳以降は年齢が上がるにつれ減少していきます。例えば、加入者が65歳を超えて働いている場合には、積立て割合は加入者が給与の5%、雇用者が5%となります。

 

なお、シンガポールのPRになって1年目はCPFの積立て率は低く抑えられており、2年目には若干増加し、3年目以降は通常の積立て率となるようになっています。

加入者と雇用者が拠出するCPF積立金は、通常口座、特別口座、医療口座に自動的に割り振られ、蓄えられます。その内訳は年齢により異なり、例えば加入者が35歳以下の場合には、通常口座に66.67%、特別口座に14.49%、医療口座に18.84%が振り分けられます。通常口座、特別口座に振り分けられる割合は加入者の年齢と共に低下し、55歳以降では特別口座への振り分けはゼロになりますが、逆に医療口座への振り分け割合は年齢と共に増加するようになっています。例えば、加入者が65歳を超えると、普通口座に10%、医療口座に90%が振り分けられます。

 

加入者がPRを返上して日本に帰国する場合、蓄えられたCPFの資金は、全額引き出すことができます。ただし、再びシンガポールに来て改めてPRを取得する場合、前回引き出したCPFの資金を全額自分のCPF口座に戻す必要があります(Employment Passで再来星する場合には戻す必要はありません)。

取材協力=Kelvin Chia Partnership 外海 周二

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.155(2009年10月19日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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