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法律相談

2008年3月3日

Q.シンガポールにおける Workplace Safety Regulation(職場の安全と衛生管理の規則)について教えてください。

職場の安全と衛生管理の規則

Workplace Safety and Health Act 2006 は2006年3月1日に施行され、シンガポールにおける職場の安全と衛生管理を取り扱う主要な法律です。同法はイギリスに存在する同様の法律(Health and Safety at Work etc Act, 1974)を参考にシンガポールのFactories Act(工場法、既に廃止)を改定した形で制定されました。

 

職場の適用範囲

同法が適用される職場の範囲は幅広く定義されています。同法5条では「職場とは、工場も含め、業務の間、或いは習慣的な業務の間に、個人が業務を遂行する為の場所」と定義され、同法の第一付則(First Schedule)には職場の種類或いは詳細説明として

 

  1. 工場の建物
  2. 空港関連施設
  3. 港湾内の船舶
  4. 港湾施設
  5. 鉄道関連施設
  6. 家庭内使用を除く蒸気ボイラー、蒸気レシーバー、或いはエアーレシーバーを使用する場所・建物
  7. 実験・検査等を行う施設

 

と明記されています。

先述のイギリスの法律とは異なり、The Workplace Safety and Health Actが適用される職場範囲にはレストランやホテル等の施設は現在のところ含まれていません。しかしながら、この適用範囲は今後3年から5年を目処に、段階的に広げられる見込みです。

 

更に同法は雇用の定義を旧工場法よりかなり広く規定しています。

雇用の定義において注目すべき点は、従業員には同意による無償労働者(いわゆるボランティア)を含むとされているほか、職場にて職務経験を積むために労働に従事する者、雇用主(A)によって第三者(C)の下に派遣された従業員(B)で、第三者(C)との雇用契約を結ぶこと無しに第三者(C)の指示を受け労働をする者(B)を含むとされています。

 

いわゆる、研修員、及び委託業務に従事する者が同法における従業員の範囲に含まれるのです。これは同法5条において、職場の占有者が安全衛生管理の責任義務を負うとされていることに由来するものです。つまり、同法では雇用者の安全・衛生管理の責任範囲が雇用者が職場の占有者である限りにおいて、職場で業務に従事するボランティア、研修員、委託業者等の雇用契約を超えたところにまで及ぶことを示しています。

 

職場における責任義務

上記の職場においては誰が安全責任を負うのかが問題になります。同法の下では、直接の雇用主や管理者だけではなく労働者自身もまた責任を負うこともあります。注目したい点は、業務形態により、一人が同時に二つ又はそれ以上の立場の義務を負う場合です。その場合、一人が同時に一つ以上の責任を負うのかどうか。同法10条は、たとえば一人が二つの立場で義務違反を行った場合、その者は二つの責任を負うとしています。

 

誰が義務を負うのか。同法では

  1. 雇用主
  2. コントラクター(工事請負人)
  3. サブコントラクター(下請人)
  4. プリンシパル(元請け)
  5. 自営業者
  6. 職場の占有者
  7. デザイナー、又は職場で使用される機械、機材、或いは有害物質の製造・販売元
  8. 職場で使用される機械或いは機材の設置、据付、或いは修理元
  9. 職場で使用される動力で動く機械の所有者、借主、賃借人、或いはその機械の維持管理者

 

としています。

取材協力=Kelvin Chia Partnership

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.117(2008年03月03日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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