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法律相談

2006年12月18日

Q.来年から新しい種類のエンプロイメント・パスができるそうですが、これについて詳しく教えてください。

パーソナライズド・エンプロイメントパス(PEP)

2007年1月1日から“パーソナライズド・エンプロイメントパス(PEP)”という新しい種類のエンプロイメント・パス(EP)が実施されます。このPEPが最も従来のEPと違う点は、PEPの有効期間中には雇用主に変更があってもEPのキャンセル・再申請の手続きをしなくとも良い点です。

 

このPEPの導入の政策的背景としては、才能ある外国人にとってのシンガポールでの就労がより魅力的であるようにしたいという狙いがあると言われています。高度なスキルのある外国人労働者獲得において、シンガポールとはいわばライバル関係にあると思われる、香港・イギリス・カナダなどには既に類似のシステムがありますが、それらの国へ人材が流出しないよう、シンガポールの発展にとって必要な人材を確保しておく必要があることからです。

 

PEPの申請資格の条件ですが、基本的に過去に既に通常のEPを取得していて、かつ、シンガポールで一定年数以上の就労の経験があることが必要です。(1)現在EP所持者の場合、2年以上EPを取得してシンガポールでの就労経験がある人(P1・P2パス所持者の場合)、または、5年以上のシンガポールでの就労経験がある人(Qパス所持者の場合)または、(2)シンガポールの高等教育機関において学位を取得した人であって、過去にEPを取得して2年以上就労したことのある人。その他の要件としては、基本給が年収で3万シンガポールドル以上であることです。配偶者や扶養家族ビザ(DP)申請も一定条件を満たせば認められます。なお、Sパス保持者の場合はPEPの申請は認められていません。

 

PEPを保持するには一定の条件があります。PEP取得期間中は、雇用を継続しなければならないこと、これは、6ヶ月以上続けて未就労であることはできないとされています。すなわち、転職先を探す場合には6ヶ月以内に決定しなければなりません。またPEPの発行は1回限りであり、有効期間は5年間、つまり延長や再申請ができません。

 

PEPのメリット・デメリットですが、メリットとしてはPEP所持者はビザの心配をしなくとも6ヶ月間まではシンガポールに滞在したままで新しい職場を探す時間を与えられる点で転職活動が容易になること、また雇用主にとってもPEP保持者を雇用する時に煩雑で時間がかかる雇用主の変更手続きを待たなくともすぐに雇用を開始できる点などがあります。一方、デメリットとしてはPEP保持者は5年が経過した時点で永住権を取得するか一般のEPに戻るなどして他のビザを取得しなければそれ以上の期間はシンガポールに滞在できないこと、また雇用主にとって、PEPは雇用主の変更可能性があるために、他社への人材流出の可能性があるということではないでしょうか。

取材協力=Kelvin Chia Partnership

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.088(2006年12月18日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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