2015年6月25日
Q.シンガポール在住の方から依頼されて、セミナーの開催を企画しています。高額ではありませんが、受講料も徴収します。この場合、(1)入国に際してどのような申請や許可が必要か(2)収益の処理に関して注意すべきこと、を教えてください。
非居住者によるセミナーの開催
(1)入国に際してどのような申請や許可が必要か
永住権を有しない外国人がシンガポール国内で役務の提供を行うには、通常は就労ビザを取得する必要があります。また、その活動内容についても、当該ビザにより許可された職業に限定されており、所定の許可なく外国人がシンガポール国内で役務提供を行うことは法律により禁じられています。ただし、ご質問の例のように、セミナーの開催といった特定の目的のためにシンガポールを短期間訪問する外国人に限り、人材開発省(MOM)に通知することにより就労ビザを取得せず活動すること(Work Pass Exempt Activities)が例外的に認められています。
この措置が適用されるのは、以下の目的による活動とされています。
- 仲裁・調停業務
- 展示会や貿易見本市への出展
- 政府の支援を受ける報道活動
- シンガポールのカジノ視察に関する活動
- ロケ撮影・ファッションショーに関する活動
- 政府の支援を受ける公演、あるいは公的な会場で開催される公演の出演者および主要スタッフ
- 工場プラントの試運転や検査、設備・機械の据付、除去、修理、保守等に関する専門的または特殊な技術の提供
- セミナー・会議・講習会等の開催に関する活動
- 政府の支援を受けるスポーツの試合・イベント等の出場者および関係者
- 外国の会社に雇用されるツアーコンダクターによる団体旅行の引率
セミナーや会議を開催する場合、直接または間接的に何らかの宗教や民族、あるいは政治活動に関係する催し物でないことが要件とされています。これらに関係する催し物である場合には、別途、雑業パス(Miscellaneous Pass)と称するビザの申請が必要になります。
MOMへの通知は、シンガポールに入国後活動を開始するまでに、MOMのウェブサイトからインターネットで行います。活動可能な期間は、入国に際して与えられた観光ビザの有効期間内であることを前提とした上で、最長60日間までとされています。MOMに活動通知を提出した後に、活動期間を延長するために移民局に観光ビザの延長申請を行った場合、MOMに対しても活動期間の延長を再度通知しなければなりません。
(2)収益の処理に関して注意すべきこと
質問者様の場合、セミナーの開催により得る報酬は、シンガポールの非居住者への支払いになりますので、シンガポールの税法上では源泉徴収の対象となります。質問者様が個人として活動している場合には、自由職業の方に支払われる報酬として取り扱われ、15%の税率が適用されます。ただし、この方がシンガポールに恒久的施設となる拠点を有さず、かつ連続する12ヵ月間におけるシンガポール滞在日数が合計で183日未満の場合には、シンガポールと日本の租税条約により、シンガポールでの課税免除を申請することができます。この適用を受けるには、源泉徴収税の申告書(FORM IR37C)と合わせて、二重課税防止条約に基づくシンガポール課税免除の申請書(FORM IR586)をシンガポール内国歳入庁(IRAS)に提出する必要があります。
取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.)
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.280(2015年05月18日発行)」に掲載されたものです。
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。