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会計・税務相談

2015年1月1日

Q.現地採用の従業員の給与体系をどのように設定したらよいか悩んでいます。どのようなことを考慮して決めればよいでしょうか。

従業員の給与体系の決定方法

従業員の給与体系を設定するには、まず最初に会社としての組織の枠組みを設定する必要があります。会社の部門および人員構成をどのようにするか、組織図を作成してみましょう。

 

272a>組織図を作成すると、会社にはどのような機能の部門があるか、それぞれの部門における指示命令系統がどのようになっているか、各部門の職位がどのような段階で設定されているかといったことが明確になります。

 

組織図を作成したら、次に各職位毎に採用条件、職務分掌、給与を設定しましょう。採用条件では、その職位に最低限要求される学歴や職業資格、経験年数等の条件を挙げます。職務分掌には、その職位が担当すべき日常の業務内容や責任範囲をなるべく具体的に書き出しましょう。給与は、その職位に対して妥当と考えられる給与の下限と上限を設定しましょう。どの程度の給与が妥当か分からない場合には、新聞やインターネットに掲載される他社の求人広告や民間の人材紹介会社による給与調査、人材省(MOM)のウェブサイトの給与水準検索等を参照するとよいでしょう。各職位の詳細を設定したら、全体として整合性の取れた内容になっているか検証しましょう。

 

上記で設定した条件に基づき採用活動を行い、面接を実施して適切な人材を採用します。採用後は定期的に人事評価を行い、給与を見直しましょう。

 

通常、最低年に一度、多くの場合会社の年度決算後に人事評価を行い、賞与や昇給、昇進を決定します。他社との横並びを気にするだけでなく、各会社固有の人事の課題を踏まえて決定する必要があるでしょう。

 

全ての従業員にとって公正な人事評価を行うには、評価基準を定める必要があります。人事評価の結果は、通常数値化して昇給や昇進の判断材料として利用し、上司は、結果を従業員の今後の成長につなげられるように、面談を実施して次年度の目標や必要な教育訓練等について話し合います。

 

シンガポール労働力開発庁(WDA)では、認定された各種教育訓練プログラムに企業がシンガポール国籍または永住権保持者(PR)の従業員を派遣した場合に90%を限度して受講料を補助する制度がありますので、こういった制度を従業員教育に活用するのもよいでしょう。

賞与や昇給は、人事評価だけではなく、会社全体の業績や物価の変動、人材の需給バランス、競合他社の動向等も加味して決定する必要があります。ちなみに、シンガポールの過去10年間の賃金上昇率(事業主負担CPFを除く)に関する統計データは下記のようになっています。

 

272b

 

2003年と2013年を比較すると、基本賃金は名目上44%、物価指数は31%上昇し、物価の影響を排除した実質基本賃金は13%上昇しました。これを平均すると、過去10年間の名目基本賃金の年間上昇率は約3.7%となります。2011年以後は物価上昇や外国人労働者抑制政策により全般的に賃金が上昇する傾向にあり、2014年も引き続き労働市場の需給逼迫による賃金の上昇は続くと見られています。物価上昇率はやや落ち着きを取り戻し、シンガポール金融庁(MAS)は2014年の物価上昇率について1.5%~2.5%と予測しています。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.272(2015年01月01日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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