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会計・税務相談

2014年5月5日

Q.シンガポールの会社の決算および会計監査に関する会社法上の規定について教えてください。

シンガポールの会社の決算および会計監査について

シンガポールで設立された会社は、設立から3ヵ月以内に会計監査人を選任して会計法人監督庁(ACRA)に登記しなければなりません。会社は、各会計年度の決算日から6ヵ月以内かつ前年の年次株主総会開催日から15ヵ月以内に年次株主総会を開催し、当該株主総会開催日の14日前までに監査を受けた財務報告書を株主に送付する必要があります。株主に提出される財務報告書は、以下の内容により構成されます。

 

  • 取締役報告書
  • 取締役声明書
  • 監査報告書
  • 損益計算書
  • 貸借対照表
  • 株主持分変動計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 財務諸表注記

 

このうち、取締役報告書については、定型的な内容で情報の有益性に乏しいとの判断により廃止され、必要な開示は取締役声明書や財務諸表注記においてなされるように改正される見込みです。 シンガポールの会社が子会社を有する場合には、連結決算書を作成しなければなければなりません。ただし、シンガポールの会社が中間親会社であり、シンガポール会計基準(SFRS)に定められる所定の要件を満たす場合には、シンガポール会社としての連結決算書の作成は免除されます。

 

2003年に会社法が改正されるまで、シンガポールではACRAに登記される全ての会社に会計監査が義務づけられていました。改正後は、年間売上高500万Sドル以下(2004年5月31日までは年間売上高250万Sドル以下)の免除私会社(Exempt Private Company)および休眠会社について会計監査が免除されています。免除私会社は、株主数が20名以下で直接または間接の株主に法人が含まれていない私会社、ならびにシンガポール政府の完全子会社で官報に免除私会社として公示された私会社を指します。一方、休眠会社は、対象となる会計年度中に以下を除く会計上の取引が一切ない会社を指します。

 

  • 秘書役の選任
  • 監査人の選任
  • 登記事務所の維持
  • 法定台帳および帳簿の保管
  • ACRAへの手数料および罰金の支払い
  • 発起人による基本定款に記載された設立株式の引き受け

 

現在、草案が公開されている改正会社法では、SFRSの「小規模事業体」の定義に用いられる売上高、総資産および従業員数の基準に基づき、小規模会社について会計監査を免除する改正が提案されています。改正後の会社法では、各会計年度において以下の要件を満たす場合に、当該年度の会計監査が免除されます。

 

  1. 対象会計年度中に終始一貫して私会社であること(公開会社でないこと)
  2. 対象会計年度直前の2会計年度の各年度について以下の要件うち2つを満たすこと

            a. 会社の売上高が1,000万Sドル以下であること

            b. 期末日現在の会社の総資産額が1,000万Sドル以下であること

            c. 期末日現在の会社の従業員数が50名以下であること

会社がグループ会社の親会社または子会社の場合には、グループとしての連結ベースで上記の要件を満たす必要があります。グループには、シンガポール国外の会社も含まれます。グループの子会社であるシンガポールの会社に対して外国の親会社も含めた連結ベースでの数値が監査免除の基準として適用されるのは、会社が連結対象の子会社である場合に会計監査を免除すると親会社による連結が困難になるであろうとの判断によるものです。

 

一方、休眠会社に関しては、非上場の休眠会社(上場会社の子会社を除く)について会計監査の免除だけでなく財務報告書の作成そのものも免除する改正が提案されています。また、休眠会社の定義として、新たに総資産額が50万Sドル以下であることという要件が加えられる改正がなされる予定です。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.256(2014年05月05日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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