シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP2014年8月より、エンプロイメント・パスの申請要件が更に厳しく...

会計・税務相談

2013年12月16日

Q.2014年8月より、エンプロイメント・パスの申請要件が更に厳しくなると聞きました。具体的には、どのような点が変更されるのでしょうか。

雇用機会均等のための新制度について

先頃、人材省(MOM)は、事業主に対し、より積極的なシンガポール人の雇用を促すため、2014年8月1日より「公平な考慮の枠組み(Fair Consideration Framework = FCF)」と称する制度を導入することを発表しました。新しい制度は、大きく分けて2つの内容から成ります。1つ目は、エンプロイメント・パス(EP)の申請に先立ち、政府管轄のジョブバンクを介してシンガポール人を対象に同一職種の採用活動を行うことを事業主に義務づけるものです。2つ目は、採用および人材育成において改善余地があると考えられる事業主について、MOMが個別に業務改善指導を行うというものです。この背景には、現状、シンガポール人の中でも特に新卒者や管理職・専門職者に関して雇用機会が限定されているという政府の認識があります。

 

1) シンガポール人を対象とする採用活動の義務化

2014年8月1日より、事業主は、EPを申請して外国人を採用する前に、労働力開発庁(WDA)が管轄するジョブバンクに同一職種の求人広告を最低14日間以上掲載し、採用活動を行わなければなりません。ジョブバンクに掲載された求人広告には、シンガポール人のみが応募することができます。事業主は、候補者を面接して採用を検討した上で、それでも希望する人材が見つからない場合に限り、当該採用広告の応募締切日から3ヵ月以内であれば、外国人を採用してEPを申請することが認められます。EPの申請書には、対応する求人広告のID番号を記載しなければなりません。

 

求人広告には、①役職、②応募締切日、③技能、④資格、⑤経験、⑥給与金額帯が記載されていなければなりません。更に、シンガポール政府、事業主、労働組合の代表者により合意された「公正雇用に関する三者協定指針(Tripartite Guidelines on Fair Employment Practices)」を遵守しなければなりません。この指針は、年齢、人種、性別、婚姻状況、宗教等を採用の要件とすることを禁じています。現実に、MOMは、これらの指針に反する採用広告を掲載した事業主に対して制裁措置を課しています。

 

なお、上記の採用広告の義務化に関して、総従業員数25名以下の事業主、もしくは月額固定給S$12,000以上のEP申請者については、免除の対象とされています。

 

2) MOMによる個別の事業主への業務改善指導

政府は、事業主による現状の雇用慣習を改善することは、一朝一夕にできるものではないと認識しています。そこで、同業他社と比較してシンガポール人管理職・専門職者比率が少ない企業や国籍等による差別待遇に関する苦情の申し立てが相次ぐ企業など、採用および人材育成において改善余地が大きいと思われる事業主を2014年第1四半期までに選別することを予定しています。これらの事業主については、人事制度に関する追加的な情報の提出を要求し、改善を促すことになります。提出が要求される情報には、以下のようなものが含まれると考えられます。

 

  • 各従業員の国籍が記載された組織図
  • 採用手順
  • 従業員の処分・解雇に関する規定および手続き
  • 従業員の昇進・能力開発に関する枠組み
  • ローカル従業員の上位職種への育成、あるいは外国人従業員削減に向けた計画書

 

MOMの指導にも関わらず改善が見られない事業主については、更に厳しい追加的措置が取られる見込みです。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.248(2013年12月16日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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