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会計・税務相談

2012年11月19日

Q.シンガポールの会社が国外源泉の所得を得た場合、シンガポールでは税務上どのように取り扱われるのでしょうか。

国外源泉所得のシンガポールでの取り扱い

シンガポールの税制は属地主義を採用しており、以下の所得が課税対象とされています。

 

  • シンガポールで発生した所得、またはシンガポールから稼得された所得
  • シンガポール国外源泉所得のうち、シンガポールで受け取った所得

 

つまり、シンガポール国外で得た所得をシンガポールに持ち込まずに国外に置いたままにしておけば、シンガポールでは課税されないということになります。ただし、これらの国外で得た所得をシンガポール国内の事業に関する買掛金の支払いにあてたり、シンガポールに持ち込まれた動産の取得費用支払いにあてたりすれば、これらの所得はシンガポールで受け取ったものと見なされて、課税所得となります。

 

シンガポールで受け取った国外源泉所得のうち、居住法人(シンガポールで管理および支配がなされていると見なされる法人)が受け取った配当、支店利益およびサービス所得については、下記に述べる3つの要件をすべて満たす場合には、シンガポールでの課税が免除されます。なお、ここで言う国外源泉のサービス所得とは、国外の固定的な営業拠点を介して提供されるサービスによる所得を指しており、そうでない場合、当該サービス所得はシンガポールが源泉地であると見なされます。

 

  1. 送金元の国で課税されている
  2. まず、当該所得が送金元の国で法人税を課税されている必要があります。例えば配当の場合には、法人税課税後の利益から配当が支払われているか、配当の支払いについて源泉徴収税を納付しているかのいずれかを満たしていなければなりません。
  3. 送金元の国の法人税の最高税率が15%以上である
  4. 当該所得がシンガポールに送金された年度に送金元の国で適用される法人税の最高税率が15%以上でなければなりません。ただし、送金された国外源泉所得が実際に送金元の国で15%以上の税率で課税されている必要はありません。
  5. 免税の適用が納税者にとって有益となる
  6. 例えば、租税条約によるみなし税額控除が適用される等、当該税制による免税の適用を受けるよりも外国税額控除の適用を受けた方が節税できるような場合があります。このような場合には、むしろ外国税額控除の適用を申請するように勧められます。

 

上記の要件を満たす配当、支店利益、サービス所得以外の国外源泉所得をシンガポールで受け取った場合には、シンガポールでも課税され、送金元の国とシンガポールでの二重課税が生じますが、送金元の国とシンガポールが租税条約を締結していれば、租税条約に従いシンガポールで外国税額控除が適用されます。シンガポールは、日本を含む50以上の国・地域と租税条約を締結しています。

 

また、シンガポールと租税条約が締結されていない国から受け取った国外源泉所得のうち、所定の所得については片務的外国税額控除が適用されるため、シンガポール居住法人の場合、実質的には国外源泉所得についてシンガポールで二重課税が生じることはあまりありません。ただし、所得の種類や送金元の国、租税条約等によりますので、大きな金額の国外源泉所得をシンガポールで受け取る予定がある場合には、事前にタックスプランニングを十分に検討する必要があるでしょう。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.224(2012年11月19日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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