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会計・税務相談

2012年9月17日

Q.シンガポールで設立された会社による配当の支払いに関する規定について教えてください。

配当の支払いに関する規定

株主による会社への出資に対する利益の還元は、原則として配当の支払いによってなされます。

 

シンガポールで設立された会社が株主に対して配当を支払う場合には、会社法および定款の規定を遵守しなければなりません。シンガポール会社法の第403条には、「いかなる会社も利益以外を原資として株主に配当を支払うことはできない」と定められています。配当原資となる利益について、会社法には具体的に定義されていません。通常、当期利益または利益剰余金のいずれかを配当原資としてよいと考えられています。

 

配当は、必ずしも現金で支払わなければならないわけではありません。現金を配当する代わりに、会社の株式を発行する等の現物配当を行うこともできます。

配当には、定時株主総会で株主に承認された決算に関して支払われる期末配当と、会計年度の途中に当期利益を見越して支払う中間配当があります。

 

通常、期末配当は、まず取締役会により提案され、定時株主総会で株主による承認を経て宣言されます。会計上、期末配当は、取締役会により提案された時点で引当金を計上し、定時株主総会において宣言された時点で未払配当として認識されます。一旦宣言された配当は、撤回することができません。

 

付属定款の規定により取締役に権限が付与されている場合、取締役は、期末配当とは別に当該会計年度の利益を見越して中間配当の支払いを決議することができます。中間配当は、あくまでも取締役による判断に基づき暫定的に支払われるものですので、株主総会による承認は必要なく、決議後に撤回することも可能です。ただし、中間配当は、あくまでも当該会計年度の決算において配当の支払いが可能な利益が見込めるという前提に基づいて支払われるものであり、万が一、決算後に中間配当の原資となる利益が確保できなかった場合、取締役は会社法第403条に違反したことになります。取締役の誤った判断により利益以上に配当が支払われ、その結果他の債務の支払いが滞った場合、取締役は債権者に対する責任を有し、利益を超えて支払った配当を会社に払い戻す義務を負います。

 

所得税法上、シンガポールにおける法人の利益は、課税所得に課せられた法人税をもって最終課税とされ、会社から株主への配当については免税所得として取り扱われます。これは、株主が居住者であるか非居住者であるかを問わず、非居住の株主への配当の支払いに関してシンガポールで課せられる税金は、配当支払会社に課せられた法人税以外には源泉徴収税も含めて一切ありません。

 

また、現在、日本では、発行済株式の25%以上を保有する外国子会社から支払われる配当について、その95%相当額が益金不算入とされていますので、以前と比較して海外子会社の利益を親会社に還元して再投資に利用するといったことが容易に行えるようになりました。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.220(2012年09月17日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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