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会計・税務相談

2012年7月6日

Q.シンガポールで新しく会社を設立し、来月から従業員を雇用します。給与の支給に関して会社が納付しなければならない社会保険料等について教えてください。

給与の支給に関して雇用主が納付する社会保険料

シンガポールで就労する従業員の雇用主は、給与・賃金の支給に関連して以下の拠出金や税金を関連省庁に納付しなければなりません。

 

  1. 中央積立基金(CPF)拠出金
  2. CPFは、日本の厚生年金に相当する制度です。シンガポール国籍または永住権を有する従業員が対象となり、従業員および雇用主の双方に月額賃金の一定率の拠出が義務づけられています。拠出金額は、従業員の年齢および賃金によって異なりますが、50歳以下かつ月額賃金S$1,500超の従業員の場合、現行拠出率は、従業員20%、雇用主16%(合計拠出限度額S$1,800)となっています。雇用主は、従業員拠出金を給与から控除し、雇用主拠出金と合わせて翌月14日までにCPF庁に納付します。
  3. 技能開発税(SDL)
  4. SDLは、日本の雇用保険に相当する制度で、徴収により積み立てられた基金は、シンガポール国籍または永住権を有する従業員の職業訓練の補助金として使用されます。SDLの対象は、以前は月額給与S$2,000以下の従業員に限られていましたが、2008年10月1日よりシンガポールで就労するすべての従業員が対象とされるようになりました。雇用主は、各従業員の月額報酬の0.25%(最低S$2、最高S$11.25)をSDLとして拠出しなければなりません。SDLの拠出が義務づけられているのは雇用主のみです。通常は、CPF拠出金と合わせてCPF庁に納付しますが、外国人従業員のみの事業所の場合は、管轄省庁である労働力開発庁(WDA)に直接納付します。
  5. 外国人労働者税(FWL)
  6. Sパスまたはワークパーミットを取得してシンガポールで就労する外国人従業員に関し、雇用主は所定の金額のFWLを毎月納付しなければなりません。FWLの金額は、就労ビザの種類、業種、熟練・未熟練労働者の別、外国人労働者比率により異なります。外国人労働者への依存を抑制する政府の方針により、FWLの料率は段階的に引き上げられており、2012年7月1日から2012年12月31日まで適用される料率は外国人労働者一人につき月にS$200からS$500となっています。同時に、外国人労働者比率も段階的に下げられています。FWLは人材省(MOM)の管轄ですが、CPF庁が代行徴収し、銀行自動引き落とし(GIRO)により翌月17日に納付されます。
  7. 各民族系基金への拠出金
  8. シンガポールでは民族毎に相互扶助を目的とした基金が設立されており、それぞれの民族に属する従業員は毎月の賃金から所定の金額を拠出することになっています。基金は、中国系人のためのCDAC、マレー系人およびイスラム教徒のためのMBMF、インド系人のためのSINDAならびにユーラシア系人のためのECFの4つがあります。各基金では、従業員の賃金に応じて月にS$0.50からS$16の拠出金を徴収しています。これらの拠出金は、従業員のみが負担します。雇用主は、従業員の給与から控除してCPF拠出金と合わせてCPF庁に納付します。

 

上記の拠出金のうち、SDLはシンガポールで就労するすべての従業員が対象となっているため、注意が必要です。特に、外国人従業員のみの事業所やプロジェクト等のため短期的に本国から派遣されている外国人従業員の雇用主は、SDLの拠出義務に関する認識がなく、また、CPF拠出金と合わせて納付する機会もないまま見過ごしている場合がありますので、十分に気をつけてください。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.216(2012年07月06日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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