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会計・税務相談

2012年3月19日

Q.現在シンガポールに子会社が2社ありますが、1社に統合して管理部門の効率化を図りたいと考えています。合併の手続きについて教えてください。

子会社の合併に関する手続き

シンガポールの会社法には、2006年1月施行の改正までは合併に関して裁判所命令を必要とする包括承継の規定しかなかったため、グループ企業の統合は一般に営業譲渡により行われていました。営業譲渡の場合には、会社が有する各種契約を個々に移転する手続きや資産の譲渡に伴う課税が生じたりします。また、営業譲渡後に清算等により会社の登記を抹消する手続きも必要になります。

 

現在の会社法には、裁判所命令を必要としない合併(amalgamation)の手続きが定められています。合併には、以下のような手続きが必要です。

 

  • 合併の詳細に関する所定の事項が記載された合併提案書を作成する
  • 各合併当事会社の取締役会は、合併が会社にとって最善の利益であることを決議し、当該合併当事会社および合併後存続会社に関して支払能力の宣誓を行う
  • 各合併当事会社の取締役会は、株主総会開催日の21日前までに、会社の全ての株主および担保権を有する債権者に合併提案書その他の所定の文書を送付し、シンガポールで発行される1紙以上の英字新聞に合併の公告を掲載する
  • 各合併当事会社の取締役会は、株主総会の特別決議による株主の承認、および合併提案書に規定される第三者(ある場合)の承認を得る
  • 会計法人監督庁(ACRA)に所定の文書を提出し、合併を登記する

 

上記の合併手続きは、全ての合併当事会社が会社法に基づきシンガポールで設立された会社である場合に適用されます。ACRAは、所定の文書および手数料を受領した後に合併通知書を発行し、消滅会社の登記を抹消します。合併は、ACRAにより発行された合併通知書に記載された日に発効します。

 

グループ企業の再編に伴い、親会社とその完全子会社が合併する場合、もしくは同一の会社を親会社とする完全子会社同士が合併する場合にはより簡易な手続きが認められており、前述の手続きのうち合併提案書の作成や新聞への公告掲載等の手続きを省くことができます。このうち、親会社とその完全子会社が合併する場合には親会社が合併後存続会社となり、同一の会社を親会社とする完全子会社同士が合併する場合には合併当事会社の1社が合併後存続会社となります。

 

合併後の会社の定款は、存続会社となる合併当事会社の定款がそのまま引き継がれます。合併当事会社の株式は、存続会社となる会社の株式を除き一切の支払い等なく消去されます。

 

合併に関する税務上の取り扱いについて、以前は消滅会社となる合併当事会社は合併により事業を終了して合併後存続会社に資産および負債を譲渡したものと見なされていたため、合併によりすべての権利義務をそのまま移転するという効果を十分に得ることができませんでした。

 

その後の税制の整備により、2009年1月22日以後に発効した会社法に基づく合併については、多くの部分において税務上も合併当事会社の権利義務がそのまま合併後存続会社に移転されるようになりました。ただし、優遇税制については、個々の制度の内容や合併後の会社の事業の状況等により引き継げるものとそうでないものがありますので、事前に監督省庁および税務当局に相談された方がよいでしょう。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.208(2012年03月19日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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