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会計・税務相談

2011年5月2日

Q.シンガポール子会社の事業を縮小したため、余剰資金が発生しています。減資を行って親会社に資金を返還したいと考えていますが、どのような手続きが必要でしょうか。

シンガポールでの減資

シンガポールでは、以下の何れかの方法により減資を行うことができます。

 

  • 未払込資本金に関して、株式に対する債務を償却するまたは減少させること
  • 対応する資産が紛失した、または存在しない払込済資本金を消却すること(日本における通常の無償減資)
  • 必要以上の払込済資本金を株主に返還すること(日本における通常の有償減資)

 

過去には裁判所命令がなければ減資することはできませんでしたが、2006年1月に発効した会社法改正により、裁判所命令によらずに減資することも可能になりました。

 

裁判所命令によらない減資を行う場合、以下のような手続きを踏まなければなりません。なお、手続きは、公開会社と私会社とでは若干異なりますので、ここでは私会社について説明します。

 

  1. 取締役会にて臨時株主総会を招集する決議を可決します。
  2. 会社の全ての取締役が減資に関する支払能力表明書に署名します。支払能力表明書とは、取締役の意見として、会社に債務を支払う能力があることを表明する文書です。支払能力表明書は、株主総会の議決日の直前15日以内に作成されたものでなければなりません。
  3. 臨時株主総会にて減資を承認する決議を可決します。
  4. 株主総会の議決日から8日以内に、内国歳入庁(IRAS)の所得税検査官に決議の文面及び議決日を含む決議可決の通知を送付します。
  5. 債権者は、会社の減資に対して異議がある場合、株主総会の議決日から6週間以内に裁判所に決議無効の申し立てを行うことができます。会社は、債権者が無料で支払能力表明書を閲覧できるように、株主総会の議決日から6週間に亘り会社の登記事務所に支払能力表明書の謄本を用意しておかなければなりません。
  6. 株主総会の議決日から6週間以内に債権者による決議無効の申し立てが行われない場合、議決日から6週以後且つ8週以内に、以下の文書を会計法人監督庁(ACRA)の登記官に提出します。 
  • 減資の特別決議の謄本
  • 支払能力表明書の謄本
  • 所得税検査官への通知、告示の要件、支払能力の要件を満たし、且つ決議無効の申し立てが行われていないことを確認する取締役による表明書
  • 減資の情報(減資により減少する資本金の金額及び消却される株式の数)を含む通知 

なお、議決日から6週間以内に債権者による決議無効の申し立てが行われた場合には、申し立ての棄却又は取り下げ等による無判決により異議申し立ての手続きが終了した後に、裁判所の命令書の謄本を含む所定の文書をACRAに提出することになります。

減資の決議および減資は、上記の提出書類に基づきACRAの登記官が減資を登記した時点より発効します。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.188(2011年05月02日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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